『漫画編集者が会社を辞めて田舎暮らしをしたら異世界だった件』(1) (イブニングKC)

田舎移住&農ライフは甘くない?『漫画編集者が会社を辞めて田舎暮らしをしたら異世界だった件』

都会で仕事に追われ、「何のために働いて生きているんだろう……」と気が滅入ってしまうことは、誰しも一度くらいはあるのではないでしょうか? そんな時、「自然豊かな田舎で暮らしてみたい!」という妄想が思い浮かんだりはしませんか? 長引くコロナの影響で、リモートワーク主体になったことから、郊外や地方に引っ越す人もいるようです。でも、都会での仕事を辞めて田舎に行くとなると、そう簡単に決断できることではありません。イブニングで連載中の『漫画編集者が会社を辞めて田舎暮らしをしたら異世界だった件』は、元漫画編集者だったクマガエさんの実体験が元になっていて、会社員生活を離れ、田舎で米作りに挑戦するという物語です。

最近、「異世界転生」もののライトノベルや漫画がやたらと流行っています。目が覚めたらファンタジーの世界だった! なんてことにならなくても、都会生活者がものすごい田舎に引っ越したら、たしかに異世界並の激変になるだろうな、と妙に納得させられるタイトルの作品が、こちらの『漫画編集者が会社を辞めて田舎暮らしをしたら異世界だった件』です。

 

本作の原作者は、講談社で漫画編集者として働いていた30代のクマガエさん。編集者としてヒット作品を出せず、そんな時に担当していた雑誌の休刊が決まります。まもなく新雑誌の創刊が決まり、そこに関わることになりそうになるものの、クマガエさんは心が折れてしまい、引き続き漫画編集者として仕事をするモチベーションを失ってしまいました。

そんなクマガエさんを投影した、本作の主人公・佐熊陽平は、いつも締め切りに追われる漫画編集者。でも、3年前に会社を辞め、田舎に引っ越し、田んぼで米を作る生活にシフトチェンジしていました。

 

といっても、米農家にジョブチェンジしたわけではありません。
佐熊が久々にかつての同僚に近況連絡をしたところ、田舎で米を作っている話が面白いと感じ、田舎暮らしに憧れを抱くイブニング編集部の編集長・伊武と佐熊を引き合わせることに。

自分で作った米を手土産として現れた佐熊に会った伊武は、空き家の古民家に手を加えたり、地元の人と心温まる交流をしたりしているのではないかと聞くと、佐熊は、築浅の賃貸アパートに住み、隣人とは会釈程度の関係と答えます。でも、佐熊はみんなが思い描くような“ザ・田舎暮らしな漢(おとこ)”はごく一部で、丸腰の漫画編集者にだって夫婦2人が1年かかっても食べ切れないような米を作れる! と自信に満ちた表情で力説します。

 

さかのぼること4年前、佐熊は自分が関わっていた雑誌の休刊を告げられます。締め切りに追われ、担当した作品が話題にもならず、何年も激務を続けていた佐熊は、心がぽっきりと折れてしまいました。気持ちを切り替えて、新たな気持ちで漫画編集者という仕事を続けようとする同僚たちを目の当たりにして、自分はもう頑張れないという気持ちに苛まれます。

できれば漫画以外の部署に異動したいと密かに願っていましたが、上司から提示されたのは、新しく創刊する漫画雑誌の編集者のポジション。

 

思わず、「会社 辞め…ます…」と口にしてしまう佐熊。でも、会社員である限り、働く部署は自由に選べないし、会社や上司の決定は絶対。しかも佐熊は結婚したばかりで、コスプレイヤーの妻・ミユさんがいます。二人の今後の生活を考えると、そう簡単に会社を辞められる状況ではありません。

 

悩む佐熊がネットであれこれ検索して、心惹かれたのが、米作りをしている男性の動画。自分で自分の食べるものを作れれば、野垂れ死ぬことはないということに気づきます。気になったらすぐに行動! ということで、東京から2時間の千葉県内某所で、都会の人向けの区画貸し田んぼに申し込み、田植えから収穫までを一通り体験することにします(このフットワークの軽さは羨ましい!)。

都会育ちの佐熊にとって、田植えは初めての経験。でも、実際にやってみると新鮮な発見の連続で、米作りに大きな可能性を感じるのです。

 

経験値ゼロの佐熊が、どうやって会社を辞め、田舎への移住を決断していくのか。そこにはさまざまな葛藤や障害があります。本当に安定した収入が得られる会社を辞めてもいいのか? 退職後の生活費をどう確保するのか? 妻の理解をどう得るか? どうやって田舎の物件を探すのか? まさにレベル1のほやほや勇者(?)が、一つずつクエストに立ち向かっていくようです。

でも、右も左も分からないで模索しながら少しずつ前に進もうとする佐熊の姿を見ていると、読み手も地方移住の疑似体験をしているようで、かなり楽しめます(そして笑える)。少し先の展開になるのですが、佐熊とミユさんは“ガチ田舎”暮らしに染まるだけではない、別の生き方ができないかと模索を始めます。また、自分の食べるものを確保するためのものとして農作業を行い、あとの半分は自分の好きなことや得意なことをする“半農半X”という考え方に出合い、佐熊にとっての“半X”を探すことになります。

まさに異世界転生ばりの激変ではありますが、どこに住むか、どんな仕事をするか、どんな生き方をするかは自分が思っている以上に選択肢があり、逆に自分で選択肢を狭めていることもあるんだな、ということに気づかされます。たくさんの発見があり、前向きなパワーをもらえる物語です。

『漫画編集者が会社を辞めて田舎暮らしをしたら異世界だった件』
クマガエ(原作)、宮澤ひしを(漫画) 講談社

がんばらない都会脱出&農ライフ!
日本社会は変わる。徹底的に変わる――。
これは、世間に先駆けて“新日常(ニューノーマル)”という大海に漕ぎだした一人の勇者の物語――!!

元漫画編集者の原作者が実体験をベースに描く
まったく新しい“がんばらない”都会脱出&農ライフ漫画!


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