2021.09.30
# 学校・教育

「体育会系は就職に強い」神話が崩壊した“根本原因”

少子化なのに体育会系学生が爆増していた
飯田 一史 プロフィール

体育会系にこそ中高時代からキャリア教育を

――中高の部活が「ブラック部活動」と言われるほど過熱する原因のひとつが「スポーツ推薦があるので教師も生徒もがんばってしまうこと」だと言われていますよね。でも推薦で入っても高偏差値帯以外の大学では採用が良くなることもなく、むしろ練習や試合の影響でインターンや就活に苦労したりする。そう考えると、体育会系の量的拡大は運動に励む生徒・学生をあまり幸せにしていないのでは?

束原 私としては、そこに警鐘を鳴らしたい気持ちがあります。

アメリカNCAA(全米大学スポーツ協会)のディビジョン1に属するような強豪大学では、ほとんどプロのように活躍する学生に対しても「トップアスリートとして活躍できる期間は短い。長い人生においてどうキャリアを構築していくのか。そのために在学中に取れる資格は何か」といったことをキャリアアドバイザー、コンサルタントが就いていっしょに考えるしくみがあります。大学のアスリート用のビルの中にトレーニングルームや休憩ルームと並んでカウンセリング用の個室が10も20も並んでいて、必要に応じていつでもキャリアカウンセリングの予約が取れ、かなりの頻度で学生も職員も真剣に話し合っています。

日本で同じことはできないにしても、アスリートとしての能力にかかわらずひとりひとりに「どんな人生を送りたいのか」という将来の見通しを立てさせた上で指導者や教職員が生徒・学生のサポートをしていくべきだと思います。

[PHOTO]iStock

ところが実際には部員が300人、400人いる部を抱える大学が存在します。そのような部に入った学生は、どう感じるでしょうか?

たとえばサッカーだと全国でJリーグクラブのユースチームがたくさんできたことによって、本当にサッカーの上手な学生アスリートがたくさんいます。だけどプロはひとつのチームから何年かにひとりふたり出るか出ないかという厳しい世界で、プロになれなかった子が大学に入っても「あなたはFチーム(6軍)からスタートね」となったりする。そうなると「やってられない」となってやめてしまう。下位チームスタートでもやめないで続けられるしくみづくりももちろん大切ですが、一方で、スポーツをやめた学生が学業や、情熱を傾けられる他の対象を見つけられるように支援することも大切だと思います。

スポーツを続けるにせよ、やめるにせよ、学生時代の経験を自分の長いキャリアの基礎に位置づけられるよう、個々の学生の人生に寄り添うことが求められていると思います。

 

――入学直後にスポーツをやめてしまうような学生の就活が順調にいくとは思えないですね。

束原 しかし、こういう学生は少なからずいます。受け入れる大学側は「下位チームスタートが不満ならやめてもらっていい」といった冷淡なやり方はやめて、丁寧にケアするよう変わる必要がありますし、大学に送り出す高校の先生や保護者もこうした現状を知っておいてほしいと思います。

今は中高の部活の指導者も、あるいは親御さんも生徒(アスリート)自身も、目先の進学しか見ていません。とにかく目の前の部活をがんばる、そして推薦で大学に行きさえすればいい、と。そういう近視眼的な姿勢で大学に行っても、入ってみたら心が折れることもありますし、身体的な怪我で競技を続けられなくなることもあります。幸い順調に競技を続けられたとしても、いざ就活の時期が迫ると苦労する学生が大勢います。ですから中高の部活から変わる必要があると考えています。

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