2021.09.30
# 学校・教育

「体育会系は就職に強い」神話が崩壊した“根本原因”

少子化なのに体育会系学生が爆増していた
飯田 一史 プロフィール

「就職に強いスポーツ」はあるのか

――先ほど少し話にありましたが、競技によって内定獲得率に差があるのですか?

束原 そうですね、データ上では、東証一部上場企業からの内定獲得率について、高いスポーツと低いスポーツがあることは事実です。しかし、「チームスポーツだから協調性が云々」といったスポーツの特性に内在的な理由を求めて企業が採用しているという証拠はありません。

たとえば日本では90年代にアメフト経験者が有利とされましたが、アメリカでもヨーロッパでもアメフト経験者の就職が良いといった調査データは見たことがありませんし、日本でも近年はとくにアメフトだけが良いということはありません。

――ではなぜ一時期アメフトが新卒市場で厚遇されたのでしょう。

束原 そのころ企業スポーツの新しい競技として注目されて銀行リーグができたり各メーカーに次々チームができたからです。私のインタビュー調査によれば、リクルートさんの場合は企業スポーツの中でもラグビーや野球はレッドオーシャンであったため、「仕事しながらでも日本一が狙えるスポーツを強化しよう」ということで早稲田大学のOBが社内アメフトチームを一から立ち上げ、牽引していったことがわかっています。

つまり種目によって東証一部上場企業からの内定獲得率に差がある理由は「その時代においてその種目が置かれた状況」の影響が大きいと考えています。

[PHOTO]iStock
 

――時代によって「就職がいいスポーツ」は変わっていくと。

束原 今ならラクロスが男女ともに就職率がいいですが、これはなぜか。ラクロスは比較的新興のスポーツです。トレーニング環境を整えるのも大変で、指導者も少ない。大学の施設を使うにも先行している部活にお願いして借りる手続きをしなければならなかったり、時間帯も朝しか貸してもらえないといった苦労がある。

すると「スポーツ推薦で大学に入り、指導者がいて、きれいな人工芝やナイター設備がある中で野球に専念」しているといった学生よりも「自分がやりたいことのために試行錯誤する」という高等教育において、あるいは仕事において必要な能力が鍛えられるわけです。

さらに言えば、そのように共通の困難を経験しているからか、他大学のラクロスサークルとも助け合いが生まれて横のつながりが強くなっているように見えます。ラクロス界では実際に、就活時期に他大学の選手と連れ立って就職フェアに行ったり、他大学のラクロス部の後輩の就職相談にのるといった相互扶助が発生しています。

アメフトについて言えば、80年代以前には力を入れている高校が少なく、勉強して大学に入ってから新しいスポーツとして取り組む人が多かった。そのような時代には実際に京大や東大、一橋がアメフトでも強かったし、全体としてアメフトの就職はよかった。ところがその後、一部の私立大学が力を入れ、付属高・系列高でも指導者を付けて強化し始め、複数の大学で強豪高校からのルートができ……とスポーツとしての普及のステージが上がっていくと就職率はかつてほどではなくなっていった……。

正確なデータが無いのであくまで仮説的にですが、今わかっていることからは、このように考えています。ですからラクロスも普及してスポーツとしての環境が整っていけば、アメフトと同じ道を辿る可能性が十分にあると思います。

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