ピタゴラスの三角数
10は「三角数」とよばれている数のひとつです。三平方の定理で知られる古代ギリシアの数学者ピタゴラスは、自然数を、三角数、四角数、五角数、……というように図形化して分類しました。
三角数というのは、

のように、数を三角形の形に並べることのできる数で、
1, 3, 6, 10, 15, 21, …
が三角数です。この中に10があります。
nまでの自然数の和
1 + 2 + 3 + … + n = n(n+1)/2
が三角数になります。n=4のときが
1 + 2 + 3 + 4 = 10
です。
この連載の6月の回〈奇数もあるの?いまだ完全には解明できない「完全数」のふしぎな性質〉でご紹介した完全数2ⁿ⁻¹(2ⁿ-1)(2ⁿ-1は素数)も、同じく三角数です。
2ⁿ⁻¹(2ⁿ-1)=(2ⁿ-1)(2ⁿ)/2
で、N=2ⁿ-1とおくと、N(N+1)/2 となるからです。
「神聖にして完全」な数
ピタゴラスは10を「神聖な数」と考えていて、10という数に特別な位置づけを与えていました。
10が三角数のひとつであることや、ピタゴラス学派の象徴である「ピタゴラスの星(五芒星形)」が10個の頂点をもつことも認識していました。

ピタゴラスは、このように数を図形と結びつけて研究し、1は点、2は線、3は三角形、4は四面体、というように、1,2,3,4はそれぞれの次元のなかの最小の図形に対応することから、1+2+3+4=10を完全な数と考えていました。
ピタゴラスは「万物は数である」という有名なことばを残しています。そして、10という数が完全な数であり、これがあらゆる数の自然をことごとく包含しているものと考えていたので、このピタゴラスの考えをもとにして完全な宇宙も10でできているという宇宙観が考えられていました。
宇宙の中心には「中心火」があり、すべての天体はそのまわりを回っていて、「水星」「金星」「地球」「火星」「木星」「土星」「太陽」「月」があり、完全な10になるために、地球とちょうど反対側に、「地球に対してあるもの」という意味での「対地星」なる天体が存在すると考えていたといわれています。
ピタゴラスも見た星空を眺めながら,10のロマンに思いを馳せるのはいかがでしょうか。
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