コロナで突然解雇、生活保護が頼みの綱

なぜ大学生は生活保護を受けられないのかー。

それは、厚生労働省が、大学生については、生活保護法にいう「利用し得る就労能力を活用することを要件」としている点を満たさないと解釈しているからだ。高校生や夜間大学等で就学している学生には生活保護が認められている一方で、「大学生(大学院生を含む)は働けるから認められない」という制度になっている。そのため、生活保護を受けるには、休学するか大学を辞めるか、または夜間学校に転学するしかない、というのが現状だ。

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そのため、生活保護世帯の父母は受給できるのに、大学に進んだ子どもだけが要件から外れるという制度になっている。虐待から逃げて世帯分離した場合も同様。どんな事情があっても、大学生という身分でいるうちは生活保護が受けられない

「就労能力の有無は、本来、その人の病状や職歴など個別の事情を踏まえて検討すべきものです。一般論にしてしまえば、極論としては大半の人にはあることになります。それなのに、大学生・大学院生は個別の事情は顧みられずに一律否定されています。大学生・大学院生という身分があると不合理に区別されているのです。虐待を受けてきた子どもたちのように、大学生の中にも、『個別の事情』があって就労が難しい人もいると、認めてほしいのです」と、飛田さんは訴える。

「奨学金があるじゃないか」「アルバイトをすればいい」という声もあるが、「背景には、大学進学は特権という意識や生活保護で悠々と暮らしていけるというイメージ、誤解があるように思います」(飛田さん)。

奨学金は学費であって、生活費は別にかかる。生活に困っているならどんな立場でも生活保護は必要だ。このコロナ禍では、アルバイトをしていた大学生が突然解雇されたり、仕事がなくなって困窮したりするケースも増えている。また、生活保護を得るために大学を辞めたとして、一度借りてしまった奨学金の返済義務は消えない。舞斗さんの場合も、300万円ほどの奨学金返済が残っており、いまも返済を続けている。

現在の舞斗さん(左)と支援活動を続ける飛田桂弁護士(右)。写真/及川夕子

また、トラウマ体験や児童期の虐待体験などがある人にはPTSDのリスクが高くなる。回復には専門家による治療が必要だということも、ぜひこの機会に知ってほしいと思う。

たとえば、家を出て安心できる場所に移ったところで、フラッシュバックが起こるということはよくある。順調に回復しているように見えても、今まで横に置いていたつらい記憶が突然戻るということが起こる。そうなると、数日は何もする気になれなくなってしまう。

「暴力や虐待の被害者は、むしろ殴られていた時の方が楽だった、時間ができるのが怖いという人も多いです。もちろん。安心・安全な環境で暮らすことは誰にとってもとても大事です。加えて傷ついた心を癒すための長い、長い時間が必要になるということもわかってもらえたらうれしいです」(舞斗さん)

あまりに壮絶な人生を歩んできた中村舞斗さん。後編の『奨学金に手を付ける、息子の名前で携帯を不正利用…、子どもを利用する大人たち』では、舞斗さんと同じように苦しむ若者たちの声と支援の必然性についてお伝えする。