ファーウェイ孟晩舟CFOの「感動的な帰国イベント」に表れた“真っ赤な異変”

生き残るためには仕方がなかったのか

「米中新冷戦の象徴」が帰国

中国時間の9月25日土曜日夜9時50分、中国政府がチャーターした中国国際航空のジャンボ機が、深圳宝安国際空港に降り立った。前方のドアが開くと、同地に本社を置くファーウェイ(華為技術)の孟晩舟(もう・ばんしゅう)CFO(49歳)が姿を見せた。創業者・任正非(じん・せいひ)CEOの長女である。

彼女は、バンクーバーで搭乗した際には、ブルーのワンピースを着ていた。だが、深圳に降り立った時には、中国共産党の党色である深紅のワンピースに着替えていた。そして、紅いカーネーションの花束を手渡された。

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思えば孟CFOは、「米中新冷戦の象徴」のような人物である。「感動的な帰国」を伝えるCCTV(中国中央広播電視総台)のニュース映像を見ていて、私の脳裏に、3年前の「事件」が甦った――。

米中貿易摩擦が激化し、「米中新冷戦」と言われ始めた2018年の12月5日夕刻(カナダ東部時間)、カナダ司法省が発表した。

「12月1日、バンクーバー空港で、ファーウェイの孟晩舟副会長兼CFOを逮捕した。これは、アメリカからの要請に基づく措置である」

この一報に、世界が騒然となった。12月1日と言えば、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで開かれたG20(主要国・地域)首脳会議の終了後に、ドナルド・トランプ米大統領と習近平(しゅう・きんぺい)中国国家主席が、1年1ヵ月ぶりの首脳会談を行った日である。その会談で、中国側はアメリカに大きく譲歩し、米中摩擦は一段落したと思われただけに、世界に衝撃が走ったのだ。

この時の経緯は、当時トランプ大統領の安保担当補佐官を務めていたジョン・ボルトン氏が、『ジョン・ボルトン回顧録』(邦訳は朝日新聞出版、2020年10月)で詳述している。

〈 ファーウェイの創業者の任正非の娘、孟が土曜にカナダに立ち寄る際に逮捕される可能性があることを、私たちは前日の金曜日に知らされていた。ファーウェイが対イラン制裁規定に大幅に違反しているのを隠蔽するなど、米捜査当局がつき止めた金融不正要件にからんでの逮捕だったので、単純な話だと私は思った。

ブエノスアイレスG20の日程は控え目に言っても慌ただしく、トランプとトルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領との会談を見ていた私は、トランプに何かを説明する際はすべての事実を事前に把握しておく必要があるとよくわかっていた 〉

 

すなわち、12月1日のブエノスアイレス米中首脳会談の際、ボルトン補佐官らは、数時間後に孟晩舟CFOがバンクーバーで逮捕されることを知っていた。だが、ボルトン氏が回顧録で示唆しているのは、首脳会談の当人であるトランプ大統領には、知らせていなかったことだ。そうなると、米中両首脳は、ともに知らないまま会談を行っていたことになる。

ボルトン氏は同書で、翌2019年の大阪G20直前の6月18日に、米中首脳が電話会談した際の様子も記している。

〈 (習近平主席は)ファーウェイのCFO孟晩舟が逮捕されたのはちょうどブエノスアイレスでの会談があった12月1日だった、と厳しい口調で言い、米中は今後も連絡を取り合おう、とあいまいに話を引き取った。(中略)

習はファーウェイに対する措置について強く抗議した。トランプはかねてからの主張を繰り返し、現在議論の俎上に上がっているすべての要素と同じく、ファーウェイも貿易協定の一部となりえると言った。

適切な措置が取られなければファーウェイの件は2国間の関係全体を損なうことになると習は警告し、呆れるほどの厚かましさで、ファーウェイはクアルコムやインテルとも重要な関係のある傑出した中国の民間企業だと主張した。ファーウェイへの制裁を解除してほしい、この件については個人的にトランプと協力して進めたいと習は申し出た 〉

このように、孟CFOの逮捕が、米中間の対立に拍車をかける格好となったと習主席は認識し、早急な身柄引き渡しを要求したのである。

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