photo 中村治

理想の本屋を作りたい――新規参入が難しい、本屋ならではの販売構造

人の頭脳と精神は、何を読んだかで決まる
「ぼくにとって、読書は仕事であり最大の娯楽でもある。物心ついた頃から、本屋は遊び場だった。」そう語るのはノンフィクション作家の田崎健太氏。自己啓発本やビジネス書だらけの本屋に辟易し、理想の本屋を作るという夢を抱いていた田崎氏。本記事では、その夢を実現させこの度9月28日に開店した書店と、自身の見解についての寄稿を紹介する。

理想の本屋を作りたい、という夢

こんな本があったのか、これも読んでみたい、そんな誘惑を断ちきりながら、カニジルブックストアというぼくが開く本屋の真新しい木製の本棚に本を並べて行った。そして自分の人生は本と共にあったのだとつくづく感じた。

ぼくの職業――ノンフィクション作家にとって、読書は仕事の一部である。

資料として1日10冊ほど飛ばし読みすることもある。そうした文献は乱雑な文章も少なくない。原稿に取りかかる前、“口直し”として好きな作家の文章を読む。これも仕事の一部だ。

そしてもちろん、読書は最大の娯楽でもある。

振り返れば、本屋はぼくの遊び場だった。物心ついた頃から、時間があれば、本屋にいた。サッカーや音楽の雑誌をめくり、漫画を立ち読みし、本棚から面白そうな本を探した。大型書店に行くと、難しい文字の背表紙に圧倒され、同時に世の中には知らないことが沢山あるのだと、わくわくとしたものだ。

書棚を眺める田崎氏(photo 中村治)

人の身体は食べたもので出来ているのと同じように、ぼくたちの頭脳と精神は何を読んできたか、で決まる、と思う。

そんなぼくではあるが、幾つかの本屋を除き、足が遠のくようになった。街の本屋では同じような“売れ線”――薄っぺらい自己啓発本やビジネス書が幅を利かせており、ぼくが読みたいと思うような本は片隅に追いやられていた。

一時期、ぼくは大学でスポーツジャーナリズムを教えていた。そのとき、何を読んだらいいのか分からない、という声を良く聞いた。そこでぼくは良質なノンフィクション作品を中心に数十冊のリストを作成した。やがて、きちんとした本を置いた本屋を作れないかと考えるようになった。そして、片隅に自分の著書を並べておく――。そのときは、単なる夢、蜃気楼のような幻に過ぎなかった。

 

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