2021.09.29
# 介護

私は夫を見捨てた…?若年性認知症の50代夫を老人ホームに入れた妻「その後の葛藤」

渋澤 和世 プロフィール

施設で暴れるようになった夫

これですべて落ち着くと思われた大野家でしたが、新たな試練はここから待っていたのです。

自分の状況を理解できない大野さんは、施設が自宅と思い込み、「俺の女房と子供をどこに隠した」と毎日わめき、暴れるようになったのです。

とはいえ、部屋に閉じ込めておくことはできません。一般的に福祉の考えとして、閉じ込める、縛り付ける等は虐待行為になり禁止されているからです。病院は医療行為である前提で家族の同意をとって、身体拘束することも可能ですが、老人ホームはまず無理なのです。

このため食事ルームでも他の利用者とは少し離すなどで対応していましたが、すぐに立ち上がりわめきます。

 

強面で身長が180cmある大野さんが暴れると、職員は制止させるのに苦労するのはもちろんですが、困ったのが他の利用者が委縮してしまうことです。

苦肉の策として椅子の後ろに荷物が置いてある席などに変えることで、簡単には立ち上がることが困難な環境に追いやられていきました。

入所した段階では立ち上がり歩くことも出来たのですが、病気も進み、加えて座っている時間が長くなったこともあり、徐々に足下が心許なくなっていきました。そうなると、立ち上がり周りに迷惑はかけない半面、倒れてしまうと怪我をする危険が増します。施設側はそれを心配してくれますが、それは夫の人としての機能が失われているということ。

周りにいるのは自分の親と同世代の老人ばかりですから、自然に口数も少なくなり、下を向いてじっとしていることが多くなっていきました。

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