2021.09.29
# 介護

私は夫を見捨てた…?若年性認知症の50代夫を老人ホームに入れた妻「その後の葛藤」

渋澤 和世 プロフィール

夫を見捨てたのでは、という葛藤

「自分が想像していた老人ホームとはちがい、とても開放的なので、少し安心しました」

しかも、その施設は自宅からも近いため、生活面のケアは施設にお願いするが、自分は精神的な支えになりたいと思っていた真由美さんの希望もクリアできます。

入居費用は月額30万円。決して安くはありませんが、一時金なしの契約でしたから、万が一相性が合わないと感じれば、退去すればいい。まずは自分の身体をケアすべきという長女からの助言もあり、この施設への入居を決めたのです。

photo by istock
 

もちろん真由美さんの心のどこかではこの選択は正しいのか、という葛藤もありました。夫を見捨てたと感じていたのです。

しかし、私は間違いではないと思います。

正直に言えば、夫から逃げたい気持ちもあったでしょう。しかし、現実的に考えて、妻が一人で夫を介護するのは困難です。若年性認知症は、高齢者のそれよりも進行が早いのです。今は身の回りのこともある程度はできていますが、一人でトイレなどの世話もすべてしなければいけなくなる日も遠くなかったでしょう。

幸い、大野さんの場合、元々証券会社の支店長だから貯蓄もありました。自宅も持ち家ですから、よっぽどのことがない限り、経済的に困ることはないでしょう。だとすれば、家族が共倒れしないための判断としては正解だったと思います。

事実、真由美さんは大野さんが老人ホームに入って以来、ほぼ毎日欠かさず夫の元に顔を出しています。また、パート勤務をはじめました。生活費には困らないけれど、家計に少しでも貢献したいし、気分転換する場所が欲しかったのでしょう。精神的避難所ができたことで精神的にも明るさを取り戻しました。

息子も父親の病状を知らなかった頃は距離ができていましたが、事実を伝えられ大学進学に向けて勉強も頑張っています。家族で話し合い、支援を上手に活用することで団結することができたと話しました。

関連記事

おすすめの記事