2021.09.29
# 介護

エリート証券マンの夫がある日「若年性認知症」に…介護に疲れた妻の「辛い決断」

すべてをひとりで抱え込んでしまい…
渋澤 和世 プロフィール

周囲や職場の人に言えなかった

それでも真由美さんの大野さんへの愛情は変わりません。

仕事優先で、家事など全く協力しない夫でしたが、収入も平均的なサラリーマンよりは多いわけですし、いい生活をさせてくれていることに、むしろ感謝していました。

夫が病気になり、自宅で過ごすようになってからも、「いままで自分たちのために頑張った夫に恩返しの意味もあり、出来るだけのことをしよう」と心から思ったと言います。

 

しかし、これまで自宅にいることがほとんどなかった夫と、四六時中過ごすことに慣れていなかったこともあり、精神的ストレスがかなりかかっていたのも確かです。

なにしろ自分は献身的に尽くしているのに、夫から出る言葉は文句ばかり。貯蓄はある程度あるとはいえ、生涯年収が激減することで、老後の人生設計も見直さなければいけません。

なによりそれまで頼りがいがあった夫が突然、何も出来なくなってしまった。そのことが、真由美さんを不安にさせるのです。

こんな時、周りに愚痴を聞いてくれる人がいれば状況も違うのでしょうが、自分の家に起こった出来事をご近所には隠していました(恐らく近所の人は気づいていたと思いますが)。

独立した娘には、事実を伝えましたが、頻繁に帰ってくることはできません。同居する高校生の息子には病気のことは隠していました。自分が頑張ればどうにか乗り切れると思っていたのと、受験を控えた大変な時期に負担をかけたくなかったのです。

結果的にすべてをひとりで抱え込むことになっていました。

「今振り返ると、あの頃の私はうつ状態になってしまったのではないでしょうか」と振り返ります。

このままでは限界だと感じた真由美さんは、専門職に相談し、夫を老人ホームに入れることを決断します。もちろん、まだ50代の夫をケア施設に入れることは、断腸の思いでした。いったんは心の平和を取り戻した真由美さんですが、当然ながらすべてが解決するわけではありません。詳しくは〈私は夫を見捨てた…?若年性認知症の50代夫を老人ホームに入れた妻「その後の葛藤」〉でご紹介しましょう。

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