2021.09.29
# 介護

エリート証券マンの夫がある日「若年性認知症」に…介護に疲れた妻の「辛い決断」

すべてをひとりで抱え込んでしまい…
渋澤 和世 プロフィール

妻も夫の異変に気づきはじめた

それまでは単語のみの数語を記録するだけで、内容を後からも理解できていたのですが、気がつくと、例えば「福岡支店、矢島」と書き留めても「あれ、何をするんだっけ?」と行動が追い付かなくなったのです。

これはまずい。そう思った大野さん、それからは要件まで細かくメモをとるようにしたものの、長い文章を書くのに慣れていなかったため、メモをとることにいらつきを感じ始めます。

その後、名前はもちろん、顧客から始まり同僚の顔すらわからなくなるまでに三ヶ月もかかりませんでした。会社の廊下で同僚に声をかけられても誰なのかがわからないことに気づいた時は自分でもゾッとして体中から冷や汗が出たと言います。

 

家庭で妻の真由美さんが夫の異変に気づいたのも、その頃でした。

「最初はトイレでの流し忘れでした。注意をすると「わかった、気をつけるよ」と言うのですが、数日するとまた流し忘れている。これはただごとではないと思いました」

夫の行動を注意してみてみると、整理整頓ができないなど、今まではない変化が見られるようになりました。営業畑が長かったため、大野さんは身だしなみにも気を使う人なのですが、同じワイシャツを何日も着続けたり、夏に冬物のスーツを着て外出しようとしたりするようになったのです。

夫におかしいと指摘するのにためらいもありましたが、大きな病気の予兆だったら後悔する。そう思って夫に言いました。

「あなた最近、ちょっと変よ。疲れているだけだと思うけど、心療内科で相談したら」

ふさげるな!と怒鳴られるのを覚悟していましたが、夫の答えは予想外でした。

「そうかもしれない。医者に診てもらえば安心だしな」

自分でも不安を感じたのでしょう。ただ、この段階では少し休めば元に戻ると信じていたようです。だからこそ、妻の言葉に素直に従ったのかもしれません。

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