習近平が「中国版リーマン・ショック」を意図的に起こすこれだけの理由

全ては中国の覇権を確立するため
朝香 豊 プロフィール

習近平総書記の「国家戦略」

朱鎔基元首相の息子で中国の金融界で大きな力を持ってきた朱雲来氏は、2017年末で中国の負債総額は669兆元(1京1000兆円)に達していると、2018年に開かれたクローズドな会合の中で話していた。その後の数字はわからないが、現在では1京3000兆円くらいにはなっているだろう。

2018年になってから、中国は急激に外資に対して、中国の金融マーケットを開放してきた。銀行と金融資産管理会社の外資出資比率の規制を撤廃し、100%出資の外資企業の設立も認めた。消費者金融、信託業務、ファイナンスリースなどで外資の導入を奨励する方針に変更した。

条件を満たす外国投資家が中国国内で保険代理業務や保険査定業務を行うことを認めた。外資の保険会社の設立に際して、事前に2年間にわたって事務所を開設しなければならないとの要件を撤廃した。もともとは中国人しか投資できなかった中国本土のA株市場へのアクセスを急激に緩めた。他にもまだまだ色々とある。

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こうした外資規制の撤廃を西側の金融機関は歓迎し、中国の金融ビジネスへの進出が加速した。日米欧が歴史的な低金利に喘いでいる中で、中国は金融市場は規模も大きい上に金利水準も高いからだ。うまくやれるなら大きく稼げる機会が用意されているのである。

実際、金融情報会社リフィニティブの集計によると、西側の投資銀行が受け取った業務手数料は、中国を中心とするアジア・太平洋での収入がヨーロッパにおける収入を上回るようになった。

2020年に中国企業が支払った手数料は前年比36%増の総額201億ドルに達したが、これが20年代半ばに1000億ドルを超えるとの見通しをゴールドマン・サックスは示している。この方針のもとで、ゴールドマンサックスは中国事業を成長の柱に据えているのだ。

イギリスの巨大銀行であるHSBCもアメリカのリテール事業から撤退し、むしろ中国ビジネスへの集中度を一層高める姿勢を見せている。HSBCの稼ぐお金の8割近くが中国市場だという話もある。

世界最大の運用会社ブラックロックも中国シフトを高めていることで知られ、このブラックロックの姿勢については著名投資家のジョージ・ソロスが「西側の安全保障に関わる」として厳しく批判したほどだ。

本来なら外国からの干渉を嫌うはずの中国が、金融という重要部門に限ってどうして対外開放を進めているのか。それは、国内のバブル崩壊の衝撃を全世界に広げようという「国家戦略」があるからだと見るべきである。

中国共産党の習近平総書記は、この混乱を利用して国内の政敵を潰すだけでなく、世界経済を撹乱し、むしろ生じた混乱によって中国の覇権を確立することはできないか、というくらいのことを考えているのだ。

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