偶像をリアルに押しつけない社会

もし、私がお尻を振るダンスをすると、性暴力を助長すると抗議を受けてしまったら、楽しんでくれている人がいてもやめなくてはならない。「あなたの持っているその武器は、人を傷つけますよ!」と加害者認定されたなら、どんなに苦労して手に入れた武器でも、じたばたせずに捨てなければならない。こういうとき、表現する側の人間は弱い。

抗議というのは、弱者のふりをした人による爆弾になるときもある。 

声をあげることは素晴らしいことだと思う。しかし、圧倒的な権力に立ち向かったり、被害に遭った人が勇気を出してあげる声と、同じ土俵に立たずに抗議するときの声は違うのではないだろうか。

「嫌いだ!」と言われることの方がよっぽどいい。「誰かがいけないことを想像するから危険なのでやめなさい!」と指示されては、反論の余地がない。

-AD-

私は、萌え絵が苦手だ。宣伝したいものとは無関係な広告塔に使われるのは、やっぱりナンセンスだと思う。でも、キャラクター自体は創作物であって、フィクションを楽しむ人にとってはなくてはならない大切な娯楽だ。

お尻を振り続けられるかビクビクしている私と同列に語ってはいけないと思うが、人がものを創作するエネルギーは、それを受け取るオーディエンスの想像しえないものだろう。

大切なことは、毒だと思いうるものを片っ端から社会から排除していくことではなく、現実とフィクションの線引きをはっきりとさせることだろう。萌え絵キャラという偶像を、リアルの女性に押しつけようとしたり、比較したりする行為こそが恥ずかしいことなんだという空気を作ることが先決じゃないだろうか。

私がお尻を振るのも、カメラの前でだけだ。どうか、いつも人目につかない道端で誘惑しているわけではないことをご了承いただきたい。

写真提供/バービー


好評発売中!バービーさん初の著書『本音の置き場所

2020年11月に連載の10回目までが一冊の本『本音の置き場所』にまとまっています。加筆修正の上、バービーを生み出した料理に関するコラム、バービーが実際作ってみたレシピ、読者からのお悩み相談も書き下ろして加えています。
バービー連載「本音の置き場所」今までの連載はこちら(加筆修正の上エッセイ集『本音の置き場所』に収録された連載の多くは途中までしか読むことができませんがご了承ください)