FRaU 具体的にはどのようなことですか?

小林 スーパーのチラシみたいなものがわかりやすいんですが、例えば「ほうれん草50円!」という文字がガンッとアピールされていますよね。悪いことではないです。ただ、最近「買い物に疲れた」という学生がいて、すごく印象に残っているんですけども、昔、僕らが大学生になったばかりの頃は自分で好きな買い物ができる喜びがあったけど、今の若い子に「買い物に疲れる」という感覚が芽生えるのは、安さのアピールばかりで、消費者に優しくないからかもしれないと。本質的な商売のやり取りではなく、いかに買わせようかと低価格を打ち出し、大量陳列に終始している店が多すぎるから。

みかんが甘いか酸っぱいかなど、そういう味覚や旬の話って、昔は八百屋さんとのコミュニケーションがあったと思うんですけど、今は店頭にものが置いてあるだけ。チラシに書かれているのは値段やポイント還元の話ばかりで、商品そのものの価値を伝えるようなサプライチェーンになってないんです。その結果、何が起こったかというと、とにかく数量を満たすこと。店の棚を数で満たすことばかりが発達した。でもその棚は全部売り切れることはなく、売れ残りは返品されて捨てられる。店や納入業者は返品しても利益を出すためにどうするかというと原価率を下げる。そうすると、100円の商品の原価が20円だったりする。売れれば80円儲かるけど、捨てたとしても20円しか損しない。ということは、欠品するよりも大量に仕入れて捨てたほうがいいじゃないかとなる。

今は数字に表れない品質評価のチャネルがなくて、消費者も忙しいから商品を数字で見るしかないというのが現状です。もっと品質にこだわる消費者が増えていけば、原価も上がっていく可能性があるし、質のいいものを同じ金額で買えて、結局お買い得なのではって気がするんです。

FRaU 確かに。品質を理解しないまま、安さだけで喜ぶというのは耳が痛い話です。

小林 だから、本質的な価値を理解するにはプロとのコミュニケーションが必要なんです。消費者がもう少し生産者や事業者とコミットして、正確な情報を聞いて、ちゃんと理解した上で購入できるようなチャネルが出てくるといい。思い入れがあっておいしいものは、フードロスになりにくいんです。あと、みなさん高いものは大事にしますよね。

例えばキャビアをパーっと捨てる人ってあまりいない。安売りされていて、それほど損をしないから捨ててしまう。これは理想論かもしれませんが、適正価格でかつ品質の良いおいしいものが世の中に溢れてくるとフードロスは減るんじゃないかというのは、僕の研究のベースにある考え方です。それこそが本当にみんなが幸せになる唯一の手段ではないかと。

FRaU とてもわかりやすいです。私たちがコミュニケーションできる店を選び、買い方を意識するだけでも効果がありそうです。