東大生が「新書四天王」の英語新書を全部読んでみた

「#新書で英語学習」ブーム到来?
現代新書編集部 プロフィール

北村一真『英語の読み方』(中公新書)

英語は世界で最も話されている言語だ。2021年現在、世界の英語話者の数は合計13.5億人ほどと推定されている。日本の人口が約1億2500万人であることを踏まえると、英語が使えるようになれば、世界中のより多くの人とコミュニケーションが取れるようになるばかりでなく、書籍や新聞、インターネットを通して得られる情報の幅もかなり広がる。

次に紹介する『英語の読み方』は、ニュースやSNS、小説といった幅広いタイプの英文の読解法を学び、実用に足る英語力を身につけることができる一冊だ。

大学入試改革の一環として、英語の4技能評価の導入が進んでいるが、こうした従来の「読み書き」を中心とした英語教育からの脱却が進む中で、なぜ今、あえて英語を「読む力」に的を絞った本を出したのだろうか。著者はその真意について次のように説明する。

4技能をバランスよく、と言う学習指針を否定するつもりは毛頭ありませんが、この傾向が読むことや書くこと、ひいてはその基礎となる英文法の学習を軽視することに結びつくとすれば、それは日本人の英語を読む力、書く力を崩壊させてしまうという意味でも、日本流の英語教育の強みを殺してしまうという意味でも、非常に危険なことだと思います。
     北村一真『英語の読み方:ニュース、SNSから小説まで』pp.1-2

また、英語を「読む力」の有無が、「聞く力」や「話す力」を自力で高めていける人と、そうではない人との大きな分水嶺にもなるという。

インターネット全盛の現代、YouTubeやポッドキャストなどを通して、英語学習に役立つ動画や音声などに簡単にアクセスすることができるようになった。一昔前の英語学習者からすれば夢のような環境だ。

それらの中には親切に英語字幕が付されているものや、スクリプト(台本)を入手することができるものも多く、最初からスラスラと聞き取れなかったとしても、文字の助けを借りることで、徐々に理解を深めていくことができる。

ところが、もし英語の読解力が弱かったとしたら、字幕やスクリプトを理解に役立てることができず、何を言っているか分からない英文を延々と聞くことになる。これでは英語力はまったく向上しない。

せっかく便利な学習ツールに溢れていても、十分に活用できないのであれば宝の持ち腐れに終わってしまう。読解力のトレーニングが、結局は他の能力を高める上でも非常に役に立つ、と著者が主張する理由がお分かりいただけただろうか。

 

英語がちゃんと読めると楽しい!

本書ではこのような考え方に基づき、まず導入編となる第1章、第2章において、基本的な読解力とその応用の方法について触れ、実践編となる第3章以降では以下のように、ジャンルごとに異なるタイプの英文に取り組んでいく。

第3章:時事英文を読む—新聞、ニュースに挑戦—
第4章:論理的文章を読み解く—スピーチ、インタビュー記事から論文まで—
第5章:普段使いの英文解釈—SNS、コミック、小説を読みこなす—

取り扱う英文は多種多様で、俳優のツイートや新聞の4コマ漫画といったライトなものから、ショーペンハウアーの文章やバートランド・ラッセルのインタビューといった哲学的なものまで、とにかく幅広い。しかし、どんなジャンルの文章であれ、その多くは英語のルールに則って書かれて(話されて)いることに変わりはない。SNSの文章を読むにせよ、論説文にせよ、やはり基本となる読解力を習得することが、とにかく大切なのだと痛感させられた。

著者は大学で教鞭をとっている研究者であるが、学生時代に予備校で英語講師を務めていたこともあり、その解説はきわめて明快で分かりやすい。おかげで、文法に昏く、雰囲気に頼った英文の読み方で大学受験を騙し騙し乗り切ったような筆者でも、英語をしっかりと理解しながら読むことの面白さを感じられた。

中学・高校で英語をひと通り学んだ。だから辞書を使って時間をかければ、ある程度は英文の意味を理解することができる。けれども、日常的に英字新聞や英語雑誌を読んだり、英語のサイトで情報収集を行うほど実用的なレベルには達していない。まさにそんな人にうってつけだ。

巻末には「『一歩上』に進むための厳選例文60」と称して、本書で取り上げられているような時事英文や評論、文学作品などを読む上で知っておいた方がよい構文や語法、言い回しを身につけるための例文集も収録されており、最後まで満足感たっぷりの一冊となっている。

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