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目の中に荒れ狂う“砂嵐”が…五輪メダリスト・水谷隼が明かした「目の異変」の正体

本日、自著『打ち返す力』を上梓

「理解されないこと」が、一番苦しい。

東京オリンピックの卓球混合ダブルスで金メダルを獲得した水谷隼さんは、9月24日に上梓した自著『打ち返す力』の中で、こう明かしている。この苦しみは、卓球選手としての苦しみではなかった。彼が苦しめられたのは、自分の目の中に荒れ狂う砂嵐だ。

「感覚機能の疾患は、これまで長く陽の目があたらずにいました。なぜなら、その疾患の多くは、患者さん本人にしか異常がわからないからです」

日本神経眼科学会理事長などを歴任した、井上眼科病院の若倉雅登氏はこう語る。

ものを見る、というとき、私たちはつい目の働きを考えがちだ。だが、実際に「見る」には、目だけでなく、さまざまな器官が必要になる。眼球の網膜から入った光の刺激は、視神経を通り、脳の後頭葉(第一次視覚野)に入り、さらに変換されて脳内各所に情報伝達され、「意味づけ」がなされる。

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たとえば東京オリンピックの卓球会場。そこには観客席があり、壁面には「TOKYO2020」の大きなロゴマークがペイントされている。卓球台があり、相手選手、レフェリー、テレビカメラ・・・と、おびただしい物体(景色)が存在している。それらの一つである卓球のボールは、眼球にとっては「白色」の何かでしかない。そこに焦点を当て、丸いもの、球、という認識が生じて、はじめて「卓球のボール」になる。
つまり見るという作業は、眼球と脳の共同作業なのだ。

神経眼科という比較的新しいジャンルの医学は、この「共同作業」に生じた何らかのトラブルを扱う。日本の眼科医でも1000人あまりしか参加していないという日本神経眼科学会の理事・清澤源弘氏が言う。

「目が悪くなった、というと、視力が落ちたり視野が欠けたりする、眼球に関連する疾患を思い浮かべるでしょう。白内障や緑内障、あるいは視力を矯正するレーシック手術のように眼科は外科的な施術が多い。しかし、神経眼科は、視力や視野の検査では正常でありながら、“見る”ことにトラブルを抱える患者さんを診療します。

 

神経眼科学が扱う主な疾患は、おおまかにいって眼球運動系、そして視覚受容系の二系統に分かれます。視覚神経の異常に起因する眼瞼痙攣(がんけんけいれん)は、目が開けられなくなったりする眼球運動系の代表的疾患ですが、これは周囲の人間にも患者さんに何が起こっているのか、ある程度、症状が目視できます。一方の視覚受容系の疾患はよりやっかいです。なぜならば、これは当人の目(もしくは頭)の中で起こっていることで、周囲からはうかがい知れない。眼科医である私たちさえも、本人の訴えを話として聞くことはできますが、症状として見ることができないのです」

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