国有企業改革もできていないくせに
9月16日、中国商務部は環太平洋連携協定(TPP)への参加を正式に申請したと発表した。TPPという多国間の経済連携協定が発効したのは2018年末のことだが、環太平洋地域屈指の経済大国である中国が、今のタイミングで参加を申請したのは、一体どういう思惑なのか。

ここで出てくる問題の一つはやはり、中国は深慮遠謀の上の既定方針としてTPP参加の申請に踏み切ったのか、それとも、単なる一時的な便宜策として申請して見せたのかであるが、今までの経緯からすれば中国の本心はむしろ後者であると思う。少なくとも中国政府は、TPP参加を国の基本方針として積極的に進めてきたわけでは決してないのである。
よく知られるように、TPP協定には「国有企業条項」というのがあって、参加国に対して国内の国有企業に対する援助を基本的に禁じている。そういう意味では、TPPというのは最初から、中国のような社会主義国家が簡単に入れないように設計されているとも言えようが、社会主義国家であるベドナムの場合、TPP参加のために思い切った国有企業の改革を断行した経緯がある。
しかし中国の場合、近年では国有企業改革を行った痕跡は全くない。実態はその逆である。今の習近平政権になってからは、「国有企業をより大きくより強くする」という習近平主席自身の号令下で、国の国有企業に対するあらゆる支援と援助をむしろ強化してきている。
つまり中国政府は今日に至るまでにTPP参加と正反対の方向で国内政策を進めてきているから、彼らはTPP参加を本気になって考えているとはとても思えない。