2021.09.21
# 韓国 # 北朝鮮

「兵器好き」の金正恩も苦境か…北朝鮮と韓国の「誰も幸せにならない」軍拡競争の行く末

牧野 愛博 プロフィール

北朝鮮が韓国との競争に躍起になるワケ

そもそも、北朝鮮は通常兵器の老朽化から、米韓が対応しにくい戦術や兵器を用いる「非対称戦」に力を入れてきた。その象徴が核兵器や生物化学兵器といった大量破壊兵器だった。ところが、最近の北朝鮮は韓国軍と同じ兵器を導入することに躍起になっている。

北朝鮮が15日に発射した短距離弾道ミサイルKN23は、ロシア製のイスカンデルによく似た兵器とされるが、一方で韓国軍が持つ短距離弾道ミサイル玄武(ヒョンム)2B(射程500キロ)にも酷似している。関係国の間ではKN23について「北朝鮮がロシアか韓国から情報を盗んで製作した」という評価が通説になっている。

北朝鮮が9月11、12の両日に発射実験を行ったという新型の長距離巡航ミサイル(射程1500キロ)も、韓国を意識した兵器とみられる。1500キロは日本の大半を射程に収める距離だが、北朝鮮はレーダー設備が貧弱で水平線を超えた標的を確認できない。 この巡航ミサイルの速度は旅客機並みで、日本に到達するまで1時間以上かかる。

自衛隊の元幹部は「バルカン砲や空対空ミサイルでも撃墜できる。日本を狙う兵器ではないだろう」と語る。射程1500キロが持つ意味は、攻撃を受けにくい中朝国境沿いから、韓国全土を狙うという意味だろう。韓国はすでに巡航ミサイルを配備。国防科学研究所は9月15日の文大統領の視察時に、超音速巡航ミサイルの開発報告も行っている。北朝鮮の実験は、こうした韓国の兵器開発を大いに意識した結果とも言えそうだ。

 

では、なぜ、核兵器も開発した北朝鮮が、韓国との通常兵器の開発競争に躍起になるのか。そもそも、北朝鮮は米国を安全保障の最大脅威と捉え、韓国は眼中になかったのではないのか。

ひとつは、最高指導者金正恩氏の「兵器好き」がある。北朝鮮関係筋によれば、正恩氏は2016年3月6日に党・軍の側近数人に対し、「やりたいことを全部できるのは、強大な革命武力と威力のある主体的国防工業があるからだ」と指摘。「先端武装装備一つ一つが、肉親のように大切に感じられる」と語ったことがある。

今年1月の党大会でも、極超音速滑空飛行弾頭の開発や原子力潜水艦、SLBMを意味するとみられる水中発射型核戦略兵器の保有などを指示していた。

北朝鮮の最近の行動を見ていると、今年3月にもKN23を発射するなど、定期的に実験を繰り返している。自衛隊関係者は「開発に向けた強い意思を感じる」と語る。前述のとおり、金与正氏も15日の談話で兵器開発の理由について「兵器システム開発5カ年計画の初年の重点課題遂行」と説明している。

ただ、北朝鮮は非対称戦力の充実を目指し、2006年10月に初めての核実験を行った。北朝鮮は当時、市民向けの講習会で「核兵器を開発したので、これからは予算を経済や民生に回すことができる」と説明していた。今の動きは明らかに、この説明と矛盾する。

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