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「兵器好き」の金正恩も苦境か…北朝鮮と韓国の「誰も幸せにならない」軍拡競争の行く末

韓国SLBMに激しく反応した北朝鮮の意図

9月15日は、韓国と北朝鮮が共にミサイルを発射する日になった。

まず、動いたのが北朝鮮。15日昼過ぎに北朝鮮西部から日本海に向け、短距離弾道ミサイル2発を発射した。ミサイルは約800キロ飛行し、日本の排他的経済水域(EEZ)の内側に落ちた。

それから間もなく、今度は韓国の国防科学研究所(ADD)の総合試験場で、文在寅大統領らが見守るなか、潜水艦「島山安昌浩(ドサンアンチャンホ)」(3千トン級)から潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)が発射された。実験は成功し、韓国は「潜水艦からのSLBM発射は、米国、ロシア、中国、英国、フランス、インドに次ぐ7カ国目だ」と胸を張った。

少なくとも北朝鮮はこの軍拡競争を意識していた。15日夜に金与正朝鮮労働党副部長が、SLBMの実験に立ち会った文大統領が「我々のミサイル戦力は北朝鮮の挑発を抑止するうえで十分だ」と語ったことにかみつき、「不適切な失言」「一国家の大統領としてはおろか極まりない」と非難する談話を発表したからだ。

金与正 朝鮮労働党副部長/photo by gettyimages
 

そして、朝鮮中央通信は17日、国際問題評論家の金明哲という人物の名前で、米国が韓国のSLBM実験には反応せず、北朝鮮の弾道ミサイル実験だけを批判したのは「二重基準だ」と非難する論評を伝えた。

北朝鮮では金正恩党総書記や金与正氏といったロイヤルファミリーの名前を使った声明を出す場合、まず正恩氏や与正氏が方向性を指示し、専属のライターが文書を作成した後、正恩氏の決裁を取るのが通例だ。韓国の通信社聯合ニュースが「SLBM実験成功」の速報を流したのが15日午後4時過ぎ。金与正氏の談話はその約6時間後の午後10時過ぎに流れた。

すでに韓国紙大手の東亜日報が7日付で「今月中旬に最終実験を行う」と報じており、文大統領の談話を取り上げるかどうかはともかく、韓国のSLBM実験を確認次第、これを非難する談話を与正氏の名前で出す段取りを予めつけていたとみられる。

金与正氏の談話には「兵器システム開発5カ年計画の初年の重点課題遂行のための正常で自衛的な活動を行っている」という記述があり、北朝鮮が短距離弾道ミサイルの発射を、韓国のSLBM実験にぶつけようとしたのは間違いないだろう。

金与正氏は談話で文在寅大統領の発言を「自分らの類似行動は平和を後押しするための正当な行動で、われわれの行動は平和を脅かす行動であると描写する非論理的で慣習的、愚昧な態度」とこき下ろした。北朝鮮もSLBMの発射実験を続けているが、SLBMを搭載した潜水艦の実戦配備は確認されていない。

与正氏の談話には、韓国に先を越されたことへの激しい苛立ちが伝わってくる。朝鮮中央通信は20日、韓国のSLBMを「自慢用、気休め用にしかならない」とこき下ろす北朝鮮の国防科学院長の談話を伝えた。

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