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39歳で認知症と診断された私が「認知症らしくない」という発言に思うコト

認知症の私から見える社会(14)
39歳でアルツハイマー型認知症と診断されて8年、全国を飛び回り、300人を超える認知症当事者と対話し続けている著者、丹野智文。彼だからこそ書けた当事者の「本音」、そしてよりよく生きていくための著書『認知症の私から見える社会』から注目の章をピックアップしてお届けします。
認知症当事者700万人時代を迎え、すべての人のすぐ隣にある世界をもっと知るために。

私の新しい人生

認知症と診断された後、仕事の内容は変わり、車の運転免許証を返納して認知症と診断される前までの生活とはまるっきり変わってしまいました。

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仕事は営業ではなくなり、事務の仕事になったことにより社内の人以外の人たちとの関わりがなくなりました。

免許証を返納したことで移動の手段が車から公共交通機関に変わりました。いままでの趣味は車があるから気軽にできていたものばかりで、車がなくなってからは遊びや行動範囲も狭まりました。生活がしづらくなったのは間違いない事実です。

しかし、一歩踏み出したことにより、いままで出会うことがなかった人たちとの出会いがありました。講演がきっかけで全国で多くの人たちと出会い、一緒にご飯を食べたり、出かけたりする仲間が増えました。

道に迷ったり、できないことがあったりする時には人に訊くことでサポートをしてもらっています。それは、家族、会社の仲間、友達だけではなく、まったく知らない人の時もあります。

みなさんが助けてくれることで人のやさしさを感じる機会が増えました。

認知症になったことはけっして良いことではありませんが、認知症になったからこそできた良い経験がたくさんあります。一つ一つの経験が私を笑顔に前向きにしてくれました。

さまざまな経験から、考える力もついたと思います。

いままで経験したことのない経験をたくさんしてきました。これも多くの人たちとの出会い、新しいつながりによるものです。もし、いろいろな場面で「ダメ」と言われていたら、いまの私はいなかったと思います。自分で決めて動いた結果、認知症になっても良い環境となり、より良い生活が送れたのです。そして「認知症になっても新しい人生を作ることができる」と私は実感しています。

でもこれからのことで不安はなくなったわけではありません。

これから先のことを考えると不安な気持ちになってしまうこともあります。

だからこそ、一日一日を笑顔で楽しく過ごそうと心がけています。

私が出会ってきた当事者の中には、元気に行動し進行していないように見える人もいます。しかし、私も同じですが、当事者それぞれが自分で進行を感じています。人の顔が認識しづらい、絶対に忘れない大切なことを忘れてしまう、例えば、姉の名前などを忘れてしまうこともありました。

けっして進行していないのではなく、進行してもより良く生きようとしているのです。

それは人とのつながりを断ち切ることがなく、自分の症状をきちんと伝え、自分の周りの環境を良くすることで安心して挑戦することができているからです。

進行していっても、より良く生きることができると多くの認知症の当事者から学びました。

 

みんなが安心できる環境、そして、「安心して認知症になれる社会」を一緒に作っていきましょう。

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