「良かれと思って」先回りした手助けが、認知症当事者の夢を奪う

認知症の私から見える社会(11)
39歳でアルツハイマー型認知症と診断されて8年、全国を飛び回り、300人を超える認知症当事者と対話し続けている著者、丹野智文。彼だからこそ書けた当事者の「本音」、そしてよりよく生きていくための著書『認知症の私から見える社会』から注目の章をピックアップしてお届けします。
認知症当事者700万人時代を迎え、すべての人のすぐ隣にある世界をもっと知るために。

何もできなくなる理由

家族は、「この人何もできなくなって」と言いながら、何でも先回りしてしまうことがよくあります。「家族がいるから困らない」という状況は当事者にとって、良い状況なのでしょうか? 誰でも「何でも先回りでやってもらえる」と何もできなくなっていきます。そうすると、当事者は「ありがとう」と常に言うようになり、何でも家族に任せるようになります。

そうなると、家族がいないと本当に何もできなくなってしまいます。その上、「ありがとう」という言葉を家族や支援者が素直に受け止めてしまうので、さらに良かれと思って何でもやってしまい、その人の生活を意図せずに支配してしまうのです。

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「ありがとう」の言葉の裏には当事者の「申し訳ない」という気持ちがあるのです。
「ありがとう」と言ってこなかった人が、認知症と診断された後に頻繁に「ありがとう」と言うようになった時は、「自分がやってきたことまで、させてしまって申し訳ない」と感じているという背景があります。

本当に感謝している時に「ありがとう」を言うのは勇気がいります。照れくさい言葉だからこそ、たまにしか言わないのです。

 

例えば、家族に申し訳ない、負担をかけさせたくないと思って自分で動いたところ、失敗してしまいさらに迷惑をかけてしまった経験があり、その時に「余計なことしないで」と怒られて「自信がなくなったので何もしなくなった」と言っていた当事者がいました。当事者も家族に感謝をしていて、これ以上負担をかけさせたくないから動いているのです。家族も「ありがとう」と言ってくれたらうれしいです。

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