「自分はダメになってしまった?」認知症当事者を諦めさせる家族のひと言とは?

認知症の私から見える社会(10)
39歳でアルツハイマー型認知症と診断されて8年、全国を飛び回り、300人を超える認知症当事者と対話し続けている著者、丹野智文。彼だからこそ書けた当事者の「本音」、そしてよりよく生きていくための著書『認知症の私から見える社会』から注目の章をピックアップしてお届けします。
認知症当事者700万人時代を迎え、すべての人のすぐ隣にある世界をもっと知るために。

嫌な気持ちになるから話をしない

認知症になると話がうまくできなくなると言われることがあります。しかし、認知症になったから話ができないのではありません。

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支援者のみなさんが、家族と当事者が一緒にいる時に、最初に当事者にではなく、家族に挨拶をしていることをよく見ます。また、名刺や冊子を渡す時も家族に渡している人たちが多いように思います。

人と接する時の「第一印象」はとても大切で、その後の関係性が変わってきます。私が営業をしていた時には車を使用する人に名刺を渡し、カタログも使用する人のほうに向けて話を聞きながら説明していました。車を使用する人に説明するのは当たり前で付き添いの人に説明をしていたら絶対に購入に結びつきません。

 

しかし、認知症になると当事者が使う制度や支援でも、すべて家族に説明され、冊子も家族に渡されます。そして、当事者への話は質問ばかりで会話をしていないと思います。

会話とは、お互いに話をしたり聞いたりして共通の話題を進めることですが、支援者は一方的に聞くだけで自分のことを話す人は少ないです。これでは会話が成り立ちません。

聞かれる一方では、当事者も尋問されているような気になって嫌な気持ちにしかなりません。だから、話をしたくなくなります。このようにして、当事者は話ができないと思われるようになっていくのです。

支援者も相手の話を聞くばかりではなく、自分の話もすることで、言葉のキャッチボールをしてくれればいいのにと思います。共通の話題でなくてもいいので、支援者が自分のことを話してから当事者の話を聞くことで、当事者も安心して話ができるようになります。ここで大切なのは言葉のキャッチボールです。

診断書やケアプランなどの書類を作成したら、家族だけではなく当事者にも必ず説明することでその後の関係は大きく変わります。

当事者のことを無視した行動では、その後の関係性はうまくいくはずがありません。まず、最初に会った時には制度を利用する当事者に挨拶して、名刺や冊子も当事者に渡して説明する。

多くの当事者が、「認知症になったら、当事者に聞かずに周りの人たちで話し合いがされている。まだ、できることもあるし、やりたいこともあるのに、気を遣われすぎて嫌だ。自分の存在がなくなると感じた時が何度もあった」と語っています。

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