DNA遊園地の妖精

2051年のナノワールド物語
藤崎 慎吾 プロフィール

夜になって、お母さんが仕事から帰ってくると、愛さんはさっそく、その胸にしがみつきました。そして妖精の話と、SNSの書きこみの話を、せきこみながら伝えます。すると、お母さんは愛さんをぎゅっと抱きしめて「ああ、ごめんごめん、怖がらせちゃったのね」と謝り始めました。何と遊園地に妖精を忍びこませた犯人は、お母さんだったのです。

「遊園地にお客さんが来なくて寂しいって、愛ちゃん言ってたでしょ。だから誕生日にプレゼントしようと思ってたのよ。お母さんがつくった、最新型のDNAナノロボットをね。実際に遊園地に入れてみて、うまく動くかどうか、愛ちゃんが寝ている間に何度か試してたのよ。専門家向けに販売されている製品だけど、ナノドクターズ・キラーなんかに使われたりしてないから、安心して」

「でも、私のDNAいかだを盗んでたよ!」

「あはは、盗んだつもりじゃなかったんだけど、それも大丈夫よ。誕生日に、ちゃんと返すから」

photo by gettyimages

3日後になっても新しいウイルスについての調査は終わらず、結局バースデー・パーティはオンラインになってしまいました。でも、楽しみなことはあります。お母さんのつくったナノロボットは、招待する友達の数だけもらいました。1人が1体を、それぞれ遠隔操作して、DNA遊園地で遊ばせることができるのです。

アトラクションはロボットのように素早くは動けないけど、お客さんは好きな所へ行って、好きな乗り物に乗ってくれるでしょう。その精巧な出来栄えに、きっと驚いてくれるはずです。そのうち、お母さんのように高度な技術を身につけたら、絶叫できるようなジェットコースターもつくろうと、愛さんは思っています。

パーティが始まる前に、サプライズがありました。ナノロボットたちがDNAいかだを、油滴の池に戻してくれたのです。それぞれのいかだには、ヘアピンのように曲げた小さなDNAで、アルファベットの1文字が書かれていました。いかだはゆっくりと近づき、お互いの形や塩基の配列を識別しながら、勝手に並んでいきます。すると最後に、こんな文字の列が現われました——HAPPY BIRTHDAY AI CHAN!

第4回〈ミミズのように這い、群れ集う「タンパク質」〉https://gendai.ismedia.jp/articles/-/88499はこちらから

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