「それ、悪口です」認知症当事者がイライラするワケはあなたにある

認知症の私から見える社会(5)
丹野 智文 プロフィール

「悪口」は本人のいないところで

何を言ってもどうせすぐに忘れるからいいやと思っているのでしょうか。これは「悪口」ではないでしょうか。悪口を言われたらイライラするし落ち込むし、怒ってしまうかもしれない。怒らせるようなことをしておいて、最近怒りやすくなったと認知症の症状にするのはとてもおかしいと思うのです。

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当事者が嫌がることを言われていることについて、「悪口」と言うと、支援者や家族に私自身が怒られることもあります。しかし、これらのことは当事者にとっては悪口でしかないのです。周囲の人がなにげなく使っている言葉で、当事者が傷ついているのです。

 

家族にしたら、悪気があるわけではなく、周囲の人に「当事者のことが心配で気持ちが落ち込んでいる」「自分の時間がなくなって大変」というつらさをわかって欲しくて言ってしまうのでしょう。事実だから言っても悪くないと思っているのでしょう。

これに対し当事者は、あきらめて我慢し反論しません。そして、当事者が何も言わないので、傷ついていることに気づかずに、家族が大変なことを認めてもらいたい気持ちから、どんどん「悪口」がエスカレートしてしまうのです。

こうした背景には、家族も追い詰められていることがあります。悪循環を止めるために家族が当事者の悪口を言わなくてもすむような環境が大切です。

家族は、当事者の「できること」探しをし、「できること」を見つけ、応援してみてください。他の家族には、当事者が「できないこと」や「失敗すること」を伝えるのではなく、できる工夫を教えてあげてください。褒められると当事者もさらに頑張ろうとなり、良い方向へ進んでいきます。

「家族の失敗とか自分は言わないようにしているけど、家族から言われて我慢をしている」「とても気持ちが落ち込み迷惑をかけていると思うと眠れなくなる」と言っている当事者も多くいます。

「悪口は本人のいないところで」。これが良い家族関係を保つための秘訣だと思います。これは、すべての人間関係の基本ですよね。

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