日頃何気なく接しているエンターテインメントが、考え方に影響を与えることもあります。影響力の大きいエンタメ作品は、時代ごとにジェンダー観をどう反映してきたのでしょうか。

今回、注目するのは「子ども向け番組」。幼い頃に夢中になったアニメや特撮ヒーロー。そんな子ども向け番組も時代ごとに変化しているといいます。知らず知らず価値観の形成に影響を及ぼしているかもしれない子ども向け番組のなかでも、長い歴史を持つ2つのテレビシリーズの変革を追りました。

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自立した女の子像を提示し続ける
プリキュアシリーズ。

『ふたりはプリキュア』©東映アニメーション 2004年に放送されたプリキュアシリーズの第一弾。趣味も性格もまったく違う二人の中学生が、魔法のステッキなどの道具や武器を使わず、自分の手で悪と戦うアクションストーリー。高い人気を博し、2005年の東京アニメアワードのテレビ部門で優秀作品賞を受賞した。

2004年から放送がはじまり、現在は18作目の『トロピカル~ジュ! プリキュア』が放送中のプリキュアシリーズ。17年という長い間、子どもたちに支持されてきた理由を初代からプロデューサーを務める鷲尾天さんに聞いた。

「最初の作品『ふたりはプリキュア』をつくるとき、私から監督の西尾大介さんに最初にお願いしたことは、女の子を主役にして本格的なアクションを撮りたいという一点だけでした」

本格アクションにこだわった構成を考えるうちに、現在のプリキュアに通じる軸ができていった。

「ピンチのときに助けにやってくる王子さまの登場はやめ、直面した問題に自分たちで立ち向かう。そんなプリキュア像が定まっていきました」

女の子は大人しくしなさいという暗黙のルールのようなものが充満している社会で、プリキュアの登場はカウンターカルチャーとなり、多くの人に熱狂的に受け入れられた。

「子どもは観たものをすべて受け入れてくれます。だからこそ間違ったことを刷り込んではいけないという緊張感を常に持っています。『女の子なんだからこうしなさい』といったセリフは絶対に入れないし、泣く必要性のないシーンでの涙は描いていません。セリフも『だわ』といった不自然な語尾は使わなくなりました」

『トロピカル~ジュ! プリキュア』©ABC-A・東映アニメーション 人魚のローラと出会った、中学1年生のまなつ。伝説の戦士・プリキュア〈キュアサマー〉に変身して、あとまわしの魔女と戦う。海とコスメをモチーフにして、「今、一番大事なことをやろう!」をテーマとして掲げている。ABCテレビ・テレビ朝日系列にて毎週日曜午前8時30分から放送中。

『トロピカル~ジュ! プリキュア』ではメイクをしながら変身するシーンがハイライト。この演出にもメッセージが込められている。

「登場人物たちがメイクをするのは、自分のテンションをあげ、気合を入れるため。誰かに見られて可愛いと思われるためではありません」

コンセプトやストーリーモチーフが変わっても信念は変わらない。初代のプリキュアから一貫して自分が主体となること、自分の意志を持つことの大切さを伝えている。プリキュアを観て育った子どもたちが社会人になり始めて数年がたつ。プリキュアで培われた価値観が社会にどう還元されていくのか、これからが楽しみだ。