「しつけないしつけ」で子どもの能力が伸びるってどういうこと?

自分をコントロールする力が育まれる
大豆生田 啓友, 大豆生田 千夏 プロフィール

「しつけ」って何?

そもそも「しつけ」とは何でしょう?「 しつけ」とは、「礼儀作法を身につけさせること」(広辞苑)とあります。一般的には、集団の規範、規律や礼儀作法など慣習に合った立ち振る舞いができるように、訓練することなどと説明されています。でも、「集団の規範、規律や礼儀作法」などと言われると、「うちの子ダメだ」などと思ってしまいますよね。

実際に子育て中のお父さんやお母さんに子どもの様子を聞いてみたら、「うちの子、すぐに手が出る」「わがまま」「人見知り」「マイペース」「いたずらばかり」……、などという声が多いのではないでしょうか。

それは、当然です。そもそも、乳幼児期は個人差や個性による違いも大きいものです。自分のペースが大切で、いざこざを通して人とのつき合い方を学び、わがままを通して自分との折り合い方を学び、いたずらを通して未知の世界を探索するのです。乳幼児期には、当然、そのような姿があることは当たり前のことで、それに対して「しつけができていない」と言うのは、違うのです。

こうした「しつけ」の定義は、成人になるまでのプロセスをイメージしており、早いうちから、いわゆる「いい子」の型にはめようとすることは、むしろ、大きな無理があるのです。

【写真】「いい子」の型にはめようとすることは大きな無理がある「いい子」の型にはめようとすることは大きな無理がある photo by gettyimages

どなったり、たたいたり、体罰によるしつけの悪影響

これまでの「しつけ」のイメージから、子どもは小さな頃から「甘やかさず」に育てる、わがままに対しては「厳しくしつける」必要があると思っている方も少なくないようです。そのため、たたいたりするなど体罰によるしつけも何となく容認されてきたような背景もありました。しかし、それが、子どもへの虐待につながっていることがいくつもの事件で指摘されてきたのです。

そのような問題を受けて、2019年の「児童福祉法」一部改正(2020年4月1日から施行)で、児童の親権を行う者は、「児童のしつけに際して体罰を加えてはならない」ことが明記されました。世界では法律で子どもへの体罰を禁止している国は50ヵ国以上で、日本にとっては大きな前進でした。

しかし、ネットの反応では、「たたかずにどうやってしつけたらいいの?」といった声も多くあげられていました。それだけ、子どもをどなったり、たたいたりすることがしつけだと考えていた方も少なくなかったのだと思います。自分が親から受けてきた子育てモデルが、体罰だった場合、自然とそうなっていることもあるでしょう。また、それはよくないとわかっていても、そうせざるをえないほど、ストレスが高い状況の方もいるのだと思います。

しかし、体罰によるしつけの悪影響は、脳の発達に悪影響を及ぼすことが、福井大学の友田明美教授らの研究で明らかになっています。

【図】体罰・暴言が脳に及ぼす影響体罰・暴言が脳に及ぼす影響(友田明美 「体罰や言葉での虐待が 脳の発達に与える影響」、2018年より)illustration by yasuhiro shimauchi

また、東京医科歯科大学の藤原武男教授や米ハーバード大学公衆衛生大学院のイチロー・カワチ教授らのチームによる研究*では、悪いことをした時にお尻をたたくなどの体罰は、約束を守れないなどの問題行動につながっている可能性があり、逆効果であることを明らかにしています。やはり、体罰による子育ては避けなければいけないのです。

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