インドで物議を醸した話題作が再上映

今秋、日本で再上映される『グレート・インディアン・キッチン』は、インドの中流家庭に、家父長制とミソジニー(女性嫌悪・女性蔑視などと訳される)がいかにはびこっているかを批判的に描いた作品だ。伝統的ヒンドゥー社会での『穢れ』の観念(生理中の女性を不浄と見なす)にも触れ、公開されるとたちまちSNSなどで様々な議論が巻き起こり、インド国内でも話題を集めた作品が日本で公開される。

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そこで、「新たなるインド映画の世界」(PICK UP PRESS)の執筆陣の一人で、南インドを中心にインド映画を長年研究している編集者・安宅直子さんの解説とともに、映画が伝えようとしたメッセージを読み解いてみたい。

仲睦まじいポスタービジュアルやタイトルからは、物語の展開は想像できない。(C)Cinema Cooks, (C)Mankind Cinemas, (C)Symmetry Cinemas

インドの保守的中流階級に残る家族制度

物語の舞台は、南インドにあるケーララ州カリカットの街。高位カースト同士の男女が見合いで結婚する。夫は由緒ある家柄の出、妻は中東育ちでモダンな生活様式に馴染んだ女性というカップルだ。

インドの中流家庭では、今も見合い結婚が当たり前だ。
「中流階級は最も保守的で、現代でも自由恋愛は軽はずみで不道徳という考え方が根強いです。恋愛結婚は時にありますが、互いのカーストや階級が合わなければ困難です。たまたまつり合う相手だった場合も、形式上見合いをすることもあります」と、安宅さんは解説する。

インドの伝統的な結婚式の様子も描かれる。 (C)Cinema Cooks, (C)Mankind Cinemas, (C)Symmetry Cinemas

豪華な結婚式が終わると、花嫁は夫とその両親が暮らす伝統的な家に入る。初めのうちは初々しい新婚生活の様子が描かれるが、家の様々なしきたりに直面し、ヒロインは困惑を深めていく。

まず、女たちは何時間も台所で過ごさなくてはならない。食材をひとつひとつ切り刻み挽き、調理し提供する。米は釜で炊き、インド式のパンは焼きたてでなくてはならない。男たちが食事をした後はテーブルが悲惨なほど汚れる。その汚れたテーブルで、女性たちはようやく自分たちの食事をとる。ヒロインは面食らうが、姑は全く気にしていない。長い暮らしの中で慣れてしまったのだろう。