砂場になってる?

「びっくりしたー! ちょっと、ただいまくらい言ってよ」
……言ったよ。という返事ももどかしく、私の口からはこんな言葉が出た。
「何? どうしたの? 散らかってるし、生ゴミ臭いよ」

「どうって、別に何もしたくないだけだよ」
いつもどおりと言わんばかりだ。
……なんだろうか。
母だけど母じゃない人と話しているような不安に襲われる。何を言うべきかわからない。ようやく出たのは次の言葉だった。

「換気くらいしなよ」
……返しがない。大きな独り言になる。

「換気! カーテン開けて、太陽浴びないと人間腐っちゃうよ!」
母が昔言っていた言葉だ。

母、無表情。都合が悪いとセルフで体内電池が切れるのか。動く気配がないので私が窓を開けに向かう。

その時、床を踏む足の裏がジャリジャリ言った。
砂か……家の中で???

幼い頃の砂場の記憶…? Photo by iStock
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頭の中ははてなマークだらけだったが、とにかく窓を開け、網戸にした。
網戸の網に砂埃がびっしり詰まっていて、入り込む風とともにぶああっと私の顔面にふりかかった。
……石にされる――かと思った。

砂のかかった目をシバシバさせながら、母の座っている座椅子の下のグレーのカーペットを見る……いやにふわふわしている。何だこれは……毛足か?転がっているペットボトルをどかしながら目を凝らす。埃のかたまりだ。積もっているのだ。
雨雲のようだ。