実家で見た「今までと違う光景」
「ただいま」
月曜日の11時過ぎだったか。実家のドアをあける。しかし返事はない。
……聞こえないのかな。
居間を覗く。
昼間なのにカーテンが閉め切られて薄暗い。
以前から雑然としたうちではあったが……雑然? 違う、そんなもんじゃない。
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薄暗さに目が慣れてきた。
ローテーブルの上に、割り箸が突っ込まれたままのカップ麺、缶詰、お惣菜プラスチック容器、腐ったミカン、バナナの皮等々の食べ残し、残骸が溢れている。ちょっとしたゴミ屋敷だ。
そんな中に埋もれるように母が、いた。
小さな座椅子にポツンと座っていた。
粗大ゴミか……心で言ってみるものの、目頭が熱くなる。
「ただいま」もう一度言ってみる。
母の首がゆっくりまわった。錆びついてでもいるのだろうか、ギィギィギシギシと音がしそうだ。こちらを向いた。ピタリと止まり目の焦点があった。
「ヒィィィ!」と母が驚く。
こちらが叫びたい。