衝撃のCMから20年…そろそろ、子どもの想像力を奪うのはやめませんか?

ふたりの作家が『まっくろ』を追い求めたワケ
大和田 佳世 プロフィール

まっくろだけどやわらかい

絵本作家にとっては、黒という色の表現もまた、これまでのやり方が通用しない難題だった。

「高崎さんが作ったCMのモノトーンの画面も好きだったものですから、何とかその色合いを踏襲しようと最初はあれこれ試したんですけど、どうしてもうまく行かなかったんです。『まっくろだけどやわらかい』と高崎さんの文にあるんですよね。やわらかい黒ってどんなだろうと思いながら、その感じを出すために試行錯誤しました」(黒井氏)

黒のやわらかさ、あたたかみを求めて、黄ボール紙での表現にたどりついた黒井氏。ファンタジーの世界の“入口”を背景色で表そうと、冒頭の教室のシーンでは黄ボール紙、途中でグレイの用紙に黄色を着彩したもの、男の子が描き重ねる場面はグレイの背景へと、徐々に色のグラデーションが移っていくようにした。

絵本『まっくろ』(高崎卓馬・作 黒井健・絵)より

担当編集者の長岡香織氏は言う。「高崎さんに黒井さんの絵コンテをお見せしたとき、『最後のページは、真っ黒になっているといいんじゃない? その黒を見て、読んだ人がそれぞれにまた何かを想像するから』とつぶやいたんです。後見返しは真っ黒に決めました」

心に思ったものを描くために

はじめの10年間は宙ぶらりんのままスケッチや試し描きだけが積み重なっていく日々で、黒井氏は正直なところ、完成を半分諦めかけたこともあったという。しかし、高崎氏は「あの企画はなくなっちゃったんだな」と思ったことは一度もなかった。

「あの少年は、僕です」と高崎氏が言ったのは、実は、自身の子ども時代の原体験があった。

 

「たしか小学校のお絵描きの時間に、水槽のザリガニを描きましょうということがあったんです。僕は水槽と紙の大きさが同じだと気がついて、水槽を真俯瞰で写すように描いたんです。原寸大で、端にいるザリガニを端に小さく。

結構気に入ってたんですけど、先生はそれじゃダメだ、もっとザリガニを用紙の真ん中に大きく描きなさいと言うんですね。僕はそのとおりにするのがイヤで泣いたんです(笑)。帰って母親に訴えると、母親は人と同じように描く必要は全くない、思うように描いたらいいと励ましてくれました」

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