39歳で認知症と診断された私が、精神科へ入院した仲間を見て思うこと

認知症の私から見える社会(3)
39歳でアルツハイマー型認知症と診断されて8年、全国を飛び回り、300人を超える認知症当事者と対話し続けている著者、丹野智文。彼だからこそ書けた当事者の「本音」、そしてよりよく生きていくための著書『認知症の私から見える社会』から注目の章をピックアップしてお届けします。
認知症当事者700万人時代を迎え、すべての人のすぐ隣にある世界をもっと知るために。

精神科病院へ入院した仲間

私が一緒に活動してきた仲間の当事者の中には、本人の意思とは関係なく精神科病院に入れられて数ヵ月で亡くなられた人がいます。

私は、実際に入院させられた当事者たちに会いに精神科病院にも行ってみました。

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みんな口をそろえて言うのは「早く家に帰りたい」ということです。一方、すべてをあきらめてしまったかのように無表情になっていた当事者も多くいました。

なぜ入院する必要があったのか? 支援者に話を聞くと、「家族が鬱になってしまい大変なので一時的に入院することになった」と言います。

 

しかし、家族が鬱になったら、なぜ、鬱になった人が病院に入らないのでしょうか? 当たり前のように認知症の当事者のほうが入院させられてしまうのが疑問です。一度そのことについて支援者に訊いてみたら「認知症の当事者は一人で家にいることができないのだから、当事者が病院に入院するのは仕方がない」と当然のように言われました。

精神科病院に入院しなければならないのは、本当に認知症の当事者なのでしょうか? 当事者が「入院しなければならない」となった時に、「なぜ入院するのか、何日間の入院が必要でどのような治療をするのか」などの説明は当事者にしていますか?

多分、家族にだけ説明していて、当事者には精神科病院に入院するという説明もしていないのではないかと思います。それは、私が仲間に会った時に、その人は家族に連れてこられ、いつの間にかここに入院していたと言っていたからです。

もし、あなたが、何か病気になり、入院した時に「何の病気で、いつまで、どのような治療が必要で、何をするのか、なぜ入院するのか」といった説明がなかったら不安で怖くないでしょうか? そして、説明がなく、入院することに同意をしていなかったら、怒ったり、混乱してしまうのではないでしょうか? 説明もされずに、入院させられ、入院中に怒ったり、混乱したりすると、問題行動とされ、隔離病棟や身体拘束となってしまうのは、おかしいと思いませんか?

これは、精神科病院だけではなく、風邪をひいて点滴をするような時でも同じです。当事者には説明がないことが多くあります。説明がなく、いきなり点滴をされたら勝手に針を抜いてしまったりすることもあると思うのです。実際に、風邪で入院した当事者が「認知症」というだけで、身体拘束をされたこともありました。

友達の当事者は、入院中に男子部屋と女子部屋を間違えたことがきっかけで薬の量を増やされて、会いに行った時には動けなくなって、寝たきりになっていました。その時にはすでに、言葉が出なくなっていましたが、私が来たことをわかって喜んでくれました。しかし、その一週間後に亡くなられたのです。

なぜ、病院で隔離されたり、身体拘束されたりするのでしょうか?

どうして、当事者に説明がないのでしょうか?

認知症の歴史を知ると、現在の状況は過去に比べれば良い方向へ変化しています。さらに良いものにするためにも、忘れるのなら忘れないように工夫をして当事者に説明をして、納得してもらうことが必要ではないでしょうか。実際に工夫次第で、症状はあるがいままで通りの生活をしている当事者もいるのです。

現在、身体拘束を行わない医療を目指して頑張っている人たちも増えてきています。もっとそのような動きが広がっていくことを願っています。

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