「ワクチンパスポート」と「マイナンバー」の「危険な関係」

まず国民の国への信頼がなければ
野口 悠紀雄 プロフィール

ここで一歩を踏み出せば国民管理に通じる?  

ところが、デジタル・ワクチンパスポートは、一般国民が利用するものである。そのような仕組みにマイナンバーが使われることになる。つまりマイナンバーの利用範囲がこれまでよりは広がるわけだ。問題は、そのような拡張が認められるか否かである。

最低限、法律改正が必要であると考えられる。では、そのような改正は、認められるだろうか? それには大きな問題があると考えられる。

マイナンバーの用途が限定化されているのは、それを国民管理の手段に用いられないようにするためだ。納税のためのe-Taxを使うのは任意であるし、社会保障制度はもともと年金番号等によって管理されている。したがって、こうした用途にマイナンバーを用いるのは、認められると考えられる。災害対策が認められるのは、生命に関わる問題であるからだ。

VRSでワクチン接種状況を正確に把握するのも国民の生命に関わる問題だから、災害関連にマイナンバーが用いられるのと同じ理由で、正当化されるだろう。この意味では、これまでの対象からの連続的な拡張だ。

ではワクチンパスポートはどうか? この目的は、経済活動の再開である。ワクチンの接種自体は国民の生命に関わることだが、その証明を経済活動の場で用いるのは、生命に関わることとはいえない。

ワクチンパスポートでのマイナンバーの利用は、これまで認められてきたものとは異質の利用である。したがって、それを認めてよいかどうかについては、十分な国民的議論が必要だ。

ここでの論点は、ワクチンパスポートは、国民を区別するための手段であることだ。ワクチンを接種した人は「良い人」、接種していない人は「悪い人」。そして、「良い人」のみに、施設の利用等を認めようというものだ。

仮にワクチン接種が義務であったとしたら、その義務を果たしていない人が「悪い人」とされても、文句は言えない。しかし、ワクチン接種は任意であった。そして、健康状態や主義主張等によって接種してない人もいるし、そもそも、接種したいと思ってもその機会を得られない人も大勢いる。だから、ワクチンバスポート自体が望ましいものかどうかは、議論すべき問題なのだ。この問題は、憲法第14条(法の下の平等)にも関わる重要な問題である。

 

事実、アメリカ連邦政府は、上記のような理由から、ワクチンパスポートを発行しないし、その提示を義務付けることもないとしている(ただし、州によっては、独自の判断から、ワクチンパスポートを発行し利用しているところもある。例えばニューヨーク州)。

関連記事

おすすめの記事