# ドラマ

『ハコヅメ』が、これまでの警察ドラマと「決定的に違っている」点

「新しいリアリティ」が視聴者を魅了
倉田 雅弘 プロフィール

『太陽にほえろ!』と『踊る』が転換点

その流れが大きく変換したのが1972年に放送を開始したテレビドラマ『太陽にほえろ!』だ。同作では、石原裕次郎演じるボスこと藤堂係長のもとに集まり、互いをニックネームで呼び合う警視庁七曲警察署捜査第一課捜査第一係の刑事たちの人間ドラマに主眼を移した。

各話で解決される事件とは別に、捜査員たちのプライベートなエピソードが展開され、特に萩原健一が演じた「マカロニ刑事」こと早見淳を筆頭とする新人刑事の成長物語の色が濃くなっていく。これは70年代に台頭してきたヒッピームーブメントを筆頭とする若者文化を受けてのことだろう。

「マカロニ刑事」こと早見淳を演じた萩原健一[ウィキメディア・コモンズ]
 

この『太陽にほえろ!』の成功を受けて、石原プロモーションは1976年から『大都会』シリーズ、1979年から『西部警察』シリーズを制作。こうしたアクション重視の作品群は、80年代の派手なエンターテインメントを好む空気と合致し、1986年からの『あぶない刑事』シリーズなどを生み出していく。

そして警察・刑事ものの大きな転換点となったのが、織田裕二演じる脱サラ刑事・青島俊作を主人公に据えた『踊る大捜査線』シリーズだ。シリーズが始まったのは1997年、阪神大震災やオウム真理教事件などの大事件を経て、既存の社会通念が揺らぎ始めていた。

このシリーズが画期的だったのは、警視庁と所轄署、キャリアとノンキャリアなど、警察内にも一般企業と変わらない組織関係や階層が存在することを明かし、それまで正義の執行人然と描かれていた警察官や刑事を組織の一構成員として描いたことだろう。

そして個人としての警察官たちも、これまでのドラマにおけるヒーローめいた刑事や警察官のイメージを覆し、コミカルな面を併せ持つリアリティのある造形が為されている。いわば『踊る大捜査線』は、警察・刑事もののアンチテーゼでありながら、人間ドラマとしてのリアリティを持ち込んだ記念碑的な作品だったのだ。

関連記事

おすすめの記事