ミャンマー問題に関するASEAN合意「暴力の即時停止」がいまだに実現されない背景

大塚 智彦 プロフィール

タイミングの悪さが露呈

こうした中、ASEAN特使に任命されたブルネイのエルワン・ユソフ第2外相が9月4日、一部マスコミに対して「8月31日にミャンマーの外相格のワナ・マウン・ルイン氏と協議して、人道支援を目的とした年末までの停戦を提案し、軍政がこれを受け入れた」と述べた。

ところがこの報道に対してミャンマー軍政のゾー・ミン・トゥン国軍報道官が9月6日、「外相は停戦提案を受け入れていない」と即座に否定したのだった。

ASEAN特使の「勇み足」だったのか、あるいは軍政の「2枚舌」なのか、真相は不明だが、こうした意思疎通の不十分さもASEANの力不足の影響ではないか、との見方もでている。

NUGのFacebookより

タイミングの悪いことにこの直後の9月7日には、民主勢力NUGのドゥワ・ラシ・ラー副大統領がオンラインで、武器を取って「一斉蜂起」して軍と対決するよう国民に呼び掛ける事態となり、ASEAN特使が言及した停戦どころか、ミャンマーの状況はますます混迷の度を深めたのだった。

ASEAN特使となったブルイネのエルワン第2外相は、外相がボルキア国王という元首が兼務していることから、国王が特使として外交の正面にでることはブルネイとしては「畏れ多いこと」としてなんとしても避けたい背景がある。

さらにいえばブルネイはラオス同様、外交的実力や影響力は決して大きくはなく、ASEAN内での存在感も小さいとされている。

 

インドネシアは当初、別の人物をASEAN特使として想定していたが、ミャンマーなどの意向からASEAN議長国のブルネイになったとされている。したがって現在のASEAN特使にルトノ外相のような手腕を期待することは難しい状況となっている。

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