「45歳定年」も話題…終身雇用が「日本人の働き方」を貧しくしている可能性について

前川 孝雄 プロフィール

上司と部下の腹の探り合い

ただ早期・希望退職募集が企業にとってもどかしいのは、辞めてほしくない人材の流出が起こり、辞めてほしい人材ほど会社にしがみつこうとすることだろう。必定、表向きは社員本人の意思を確認する面談といいつつ、実質は退職勧奨に近いキャリア面談が頻発することになる。

面談者である管理職層も早期・希望退職対象に入っている場合もあり、面談対象者となるベテラン社員ほど会社経営側の意図がわかるゆえに、上司も部下も互いに腹の探り合い状態となる。本音と建て前が異なる、陰湿なコミュニケーションが跋扈してしまい、現場モチベーションはますます低迷してしまう。

〔PHOTO〕iStock
 

ここで強調しておきたいのは、雇用保蔵者とされる人たちは望んでそういう状態になったわけではないということだ。雇用を守る日本型雇用においては、新卒入社のタイミングでは、就職ではなく就社することになる。入社後は、会社の強権人事によって辞令1枚で異職種への異動や地域・世界への転勤を余儀なくされてきた。その対価として年金生活まで面倒を見てくれる暗黙の了解があったからだ。

ただ、数十年もこの会社都合の人事に依存してしまうと、自分で自分のキャリアを考えて学ぶ自律意識がどうしても弱くなってしまう。長年会社に滅私奉公してきたのに、突然キャリア面談と称して退職勧奨されるとは、寝耳に水とショックを受ける人も少なくないだろう。つまり雇用保蔵者も、日本型雇用の負の面の被害者ともいえるのだ。

こう考えると、金銭的解決が認めらており転職市場も発達しているアメリカや、官民あげて失業者のスキルアップを支援する仕組みが成熟しているスウェーデンの方が、よほど健全なキャリア形成と企業成長が実現できるとすら思えてくる。

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