「45歳定年」も話題…終身雇用が「日本人の働き方」を貧しくしている可能性について

前川 孝雄 プロフィール

「働かないおじさん」問題の本質

さらなる問題は、平均賃金を低く抑えてでも雇用を守ろうとするために、現在推計600万人を超える「雇用保蔵者」がいることだ。雇用保蔵者とは、毎月の給与は支給されるものの、実質的な仕事がない社内失業者だ。昭和のころは「窓際族」と揶揄される程度の少数派で済んだのだろうが、600万人ともなると、雇われて働く人たちの10人に1人にも上り、尋常な規模ではない。年功序列で上がった給与に見合わず、「働かないおじさん」と揶揄して済む問題ではないのである。

雇用保蔵者は、今の時代にマッチしたスキルを身につけられず、働きがいや成長も期待できず、組織内に留め置かれた状態といえる。一方、企業は経済のグローバル化や第4次産業革命の荒波の中で、DX(デジタル・トランスフォーメーション)への対応をはじめ、事業構造の大転換を迫られている。当然ながら社員が新たなスキルを身につけ活躍できなければ、自社の事業刷新も滞り、経営自体が行き詰まることになる。そうなれば、結局社員の雇用も守れない。

 

日本では、欧米諸国と比べて、実態としての解雇規制が厳しく、スキルが陳腐化し成果を出せなくなった社員を容易に解雇はできない。「雇用を守る」経営の美徳からしても、表立ったリストラはやりづらい。でも社員の新陳代謝を図りたい企業としては「早期・希望退職募集」という名の社員の自己都合退職を募るしかなくなる。

東京商工リサーチによると、コロナ禍1年目の2020年、早期・希望退職募集を開示した上場企業は93社にのぼった。リーマン・ショック直後の2009年の191社に次ぐ高水準であり、前年の35社から2.6倍増と急増している。コロナ禍の経営不振によるものと思われがちだが、実態は異なる。コロナ禍以前の2019年にすでに早期・希望退職募集を実施した上場企業数は前年の3倍となっており、内訳としては業績不振以外34.3%も占めていたことからもわかる。

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