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もらえるはずの年収より180万円少ない…ブラック職場の保育士が搾取される「深刻な構造」

「180万円も違うのですか!?」

東京23区内の認可保育園で働く保育士(30代後半)が、驚きのあまり声をあげた。それというのも、その保育士が受け取ることができるはずの年収が565万円の一方、実際の年収との差が180万円もあったからだ。いったい、どういうことか。

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「委託費の弾力運用」の罪

筆者はこれまで、認可保育園の運営費である「委託費」から人件費が流用され、保育士が低賃金となる問題を繰り返し指摘してきた。委託費の使途は、「人件費」「事業費」「管理費」の三つで、かつては「人件費は人件費に」という使途制限があった。2000年に営利企業の認可保育園への参入が認められるとともに、人件費を他に流用することまで認められるようになったのだ。それが「委託費の弾力運用」という制度となる。

この委託費の弾力運用によって保育士の処遇が改善しないと国会でも度々問題視されたことから、公費から出ている人件費の金額の詳細が、2021年度に初めて公表されることになったのだ。認可保育園の運営に必要な費用は全国を8つに分けた地域区分と定員規模、園児の年齢によって金額が決められている。今まで国は全国平均でしか人件費の金額を示してこなかったが、地域区分ごとの人件費(この場合は法定福利費や処遇改善費を含まない)を公表したのだ(https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/law/kodomo3houan/pdf/r030331/r03-unei_hiyou.pdf)。

通知にある「100分の20地域」というのは特別区(東京23区)を指し、最も高い人件費が計上されている。保育士1人当たり年間442万円が基本的な賃金として各認可保育園に支払われている。次いで高いのが横浜市や大阪市などを指す100分の16地域で同427万円となる。これはあくまで基本的な賃金で、処遇改善費が最高額で上乗せされると東京23区であれば年間賃金が565万円になる計算となる。

しかし、冒頭の保育士は「年収は約380万円。人手が足りず、長時間労働を強いられているが、ほとんどサービス残業です」と話す。公費から支出されているはずの565万円には遠く及ばない賃金水準だ。これは同保育士に限らない。東京23区で働く保育士の年間賃金は平均で381万円でしかない(内閣府「幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」2018年度の実績)。

ただ、委託費の人件費は園児数に対する必要な最低配置基準に基づいた金額が支払われるため、現場に余裕を持たせるために保育士を配置基準より多く雇っている場合は、一人当たりの賃金が低くなる可能性はある。

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