傷みがあるのは誰にとっても辛い。しかも原因がわからないと不安にもなる。たとえば幼い子どもだと、原因がわかったとしても我慢するのは難しいだろう。保護者はできることはないかとあたふたする。注射のときに痛いから嫌だと子どもが暴れている様子を見聞きしたことがある人もいるのではないか。そしてそれが、認知症の義母だったらあなたはどうするだろうか。

痛みをともなう病気としてよく知られるのが帯状疱疹である。
帯状疱疹とは、加齢やストレス、過労などの原因によって免疫力が低下した時、水疱瘡のウイルスが再び活動をはじめて発疹と激しい痛みを引き起こすものだ。発症年齢は60歳代を中心に、50~70歳代に多く見られる病気だという。

その帯状疱疹に認知症の家族がなってしまったら。しかも、それがいろいろ謎行動で困らされていた義母だったら……。
そんな状況になったのが上松容子さんに、詳細をお伝えいただく。これは名前を変えてのドキュメンタリーである。

容子    20代後半で結婚。現在50代
夫     容子と同い年。営業職
明子    容子と夫の一人娘
実母登志子 昭和ヒト桁生まれ 元編集者を経て専業主婦。認知症で要介護2
義父       東京近郊在住 大正生まれ 中小企業社長
義母トミ子 昭和ヒト桁生まれ 元看護師 専業主婦
上松容子さん「謎義母と私」今までの連載はこちら
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ある朝の「わずかな兆候」

ある朝、義母を起こしに行ったときのことである。その日も、彼女は布団を頭からかぶって床から出ようとしなかった。ただ、掛け布団の下で「痛い〜、痛い〜」とうめいている。以前、緑内障の発作が起きたときも、子どものように痛い痛いと訴えていたが、あのときほどの騒ぎではなかった。

「痛い~痛い~」という声が…Photo by iStock

「どうしたんですか?」と声をかけると、ようやく布団から頭を出した。
「容子さん、右腕が痛くて動かせないんだよ」

私たちが知らないうちに転んだのだろうか? パジャマの袖をまくってみるが、特にあざらしきものは見当たらなかった。

「どんな痛みなんですか?」
「なんだかよくわからないけど、肩から先がずっきんずっきんするんだよ」

もうすこしよく見ようと義母の腕を取ると、それだけで「いたたたた」と顔をしかめた。腕の表裏をよくよく見る。すると肩に近いところに1ヵ所、虫刺されのような点があった。ハチに刺されたのだろうか。本人に尋ねるが、そんなはずはないと答える。しかし、たとえ直前の出来事でも覚えていないことがあり、虫刺されの可能性は捨てきれない。

デイケアの連絡帳にそのときの状況を詳しく書き込んだ。その日は仕事が立て込んでいたので、なにか異常が起きたら夫に連絡をと付け足して、職場に向かった。