パク 私は村上春樹氏の作品が好きで昔から愛読しているのですが、あるとき、「私はまだ若い女性なのに中年男性の気持ちがものすごく理解できている……!」とつくづく思ったんです。

小林 その気持ち、すごくよくわかります! 私も村上春樹さんの小説が好きすぎて、それで漢字を覚えたほどなのですが、小さな頃から読み込み過ぎたせいか、女というのは中年男性の“やれやれ”みたいなことに付き合っていくものなんだってずっと信じていたんです。大人になってそれに気がついてちょっとトラウマというか(笑)、驚いたんです。

でもパクさんや、多くの女性作家が描いた色々な種類の女性の生き様に触れて、男性目線から描かれた女性像だけに合わせていくような生き方をしなくていいんだ! と感動したんです。だからこれからももっと多様な女性像に触れたいし、幼い頃にもっとそういう作品を読めていたらよかったなとも思います。ですから近年のフェミニズム文学のムーブメントにはすごく勇気をもらっているんです。

パク そう言っていただけて嬉しいです。小林さんはどんなふうに女性を描いていきたいと思っていますか?

小林 私はこの10年ほど「目に見えないもの」をテーマに放射能の歴史や原子力にまつわる作品を発表したり、アンネ・フランクや実の父親が残した戦時中の日記をモチーフにした小説などを書いています。こう説明すると、すごく大きな歴史を扱っていると思われがちですが、歴史をそのまま描こうとすることはあまりなくて、その大きな歴史のなかに生きている、あるいは生きていた人間を描きたいと思っています。

もちろんそこには女性だけじゃなく男性もいるのですが、歴史書などに記されているのは武将とか男性のことばかりが目立ちます。でもそこには必ず女性や子どももいたはずですから、その人たちがどういうふうに生きていたのか、その詳細をできる限り調べて書き残したいと思っているんです。

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パク 私が「こんな女性、どう?」と読者に提案するのに対して、小林さんは実在した女性たちの人生に光を当てて、さまざまな女性像を表現したいと考えているんですね。

小林 女性はもちろん、歴史に書き記されなかった弱い立場の人々の声を聞きたいというのが創作の根幹にあります。それは個人個人が生きていくにあたってとても大切なことですし、人間が生きるという根源的なことにつながっていくと思っています。