「伝わらない...」苦しみの中で見つけたシンプルな英語の世界

動詞を活かせば英語が変わる
中山 裕木子 プロフィール

1日1万ワードの英作文が可能に

日本語は行間を読ませることが多い「ぼんやりした」言葉だ。対して英語はストレートで具体的に表す言葉だ。日本語を頭に浮かべて英語の主語と動詞を取り出す動作は、頭の中のモヤモヤをまっすぐに整える作業でもある。例えば「操作が簡単な(easy-to-use)スマホが求められている。」を英語で表現するとき、「誰が求めているのか」「スマホは1台か複数台か」といったことをクリアにしなければならない。主語を決め、動詞を続ける。主語を「多くのユーザ」にしてみよう。動詞は「好き(like)」。ほかにも主語を「市場・マーケット」、動詞を「必要としている(need)」としてもよい。

     ○ Many users like easy-to-use smartphones.                                      
     ○ The market needs easy-to-use smartphones.

2つの文が完成。コミュニケーションの正解は複数。主語に合わせて選んだ動詞が明快な表現のカギとなる。

私は引っ込み思案な性格で、それまで職場でも日常生活でも明快に言い切ったことなどなかったため、英文を組み立てる作業はまるで自分が違う人間になったような体験だった。英語でスッキリ短く伝えることは気持ちがいい。これなら自分にもできる。英語のブロックを置く場所は「主語S」→「動詞V」の順に決まっているから、迷いがない。

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動詞に着目して英文を組み立てたところ、私の仕事はみるみる変わった。職場では「あなたの翻訳文は読みやすい」と技術担当者に褒められた。また、「動詞」を決める力がついたことで、仕事を格段に早く終えられるようになった。速度が上がり、1日に1万ワードの英文を作成することもあった。

 

技術英語はプログラミングのようだ

「シンプルな英語」を極めるためにフリーランスの特許翻訳者として独立。同時に公益社団法人日本工業英語協会(現・日本技術英語協会)の専任講師になり、それまでに体得した英語の技法を理系学生に教えはじめた。

京都大学、名古屋大学をはじめとした大学や高専で英語論文執筆講座を担当した。彼らの研究内容が読み手に平易に伝わるような指導に努めたところ、シンプルな英語が持つ力を知った理系学生、大学教員、研究員から英語の苦手意識が減ったという報告が相次いだ。

技法を使って自ら総合的な英語力をぐんぐん伸ばしていく理系学生たちの姿を目の当たりにした。常に「理由」を考えながら科学技術の難題に取り組んでいる理系研究者たち。「この表現はこういう理由で他の表現よりも伝わりやすい」と理由と根拠を示した英語の授業が、彼らに受け入れられたようだった。

授業の感想をくれた学生もいた。「これまで英語は雲のように浮いた教科だと思っていたのに、違うとわかった。シンプルな英語はまるでプログラミングのようだ。必要な要素を決まった場所にカチッ、カチッ、と当てはめて配置する。すると一つのセンテンスが間違いなく仕事をしてくれる(=情報を伝えてくれる)。」

彼らはルールを自ら応用することで、短期間で英語力を伸ばした。英語の苦手度が減ったことで、TOEICの点数が大幅アップしたという報告も得た。私のほうも、毎週の授業で彼らから寄せられる英語に関する理詰めの質問に答え続けた結果、シンプルな英語の手法を強化し、独自に確立することができた。

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