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「伝わらない...」苦しみの中で見つけたシンプルな英語の世界

動詞を活かせば英語が変わる
技術英語のスペシャリストにして、ベストセラー『会話もメールも英語は3語で伝わります』の著者が、より高いレベルを目指したい方々のために、最短・最強の英語学習法を公開する現代新書の最新刊『シンプルな英語』。
今回は発売を記念して、著者の中山裕木子氏によるエッセイをお届けします。
世界で通用する、恥ずかしくない英語力を身につけるカギとは?

英検1級も役に立たない実務の世界

20年前、複雑なテクノロジーを扱う特許翻訳者となった私は、英文を書く難しさに圧倒されていた。コピー機、デジタルカメラ、携帯電話、半導体といった材料、新規なテクノロジーは複雑で難解。日本語をそのまま英語に置きかえただけの私の英文は、先輩翻訳者に真っ赤にチェックされた。

英検1級をもって英語を勉強してきたつもりだったのに、実務の世界では通用しない。専門用語がわからないだけでなく、英文の構造が複雑になり、読み通せない翻訳文に仕上がっていた。文法的には正しいのに、伝わらない。どう改善すればよいのかわからずに途方に暮れた。

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すがる思いで「英語の書き方」の教科書を探した。目に付いたのは「テクニカルライティング」と名の付く英語ネイティブ向けの洋書の数々。日本語では「技術英語」や「工業英語」と呼ばれる分野だ。手に取ると、驚いたことに、Use verbs!(動詞を活用しよう)という指針が現われたのだ。Use active voice.(能動態を使おう)。Use present tense.(現在形を使おう)。それまで目にしたことがなかった動詞にまつわるルールが整然と書かれていた。

中学、高校の英語の授業では、正しく英語で表現するための様々な文法の決まりを学ぶ。ところが、数ある表現のうちのどの表現を使えば伝わりやすく、誤りにくく、早く伝わるかということを教えてくれる先生はいなかった。英語のテストで良い点が取れたとしても、現実の世界で「早く的確に相手に伝えること」ができない。

伝えることを第1の目的とした「シンプルな英語」の世界が存在している。特許翻訳の業界でこのシンプルな英語を実践している人はまだ少ないようだ。目の前に見えた一筋の光を頼りに、鍛錬の日々がはじまった。

 

動詞を早く出すと結論が伝わる

私はシンプルな英語にのめり込んだ。朝早く職場の席に着くと、脇目もふれずに翻訳をはじめた。英文では、はじめに「主語」を決め、「動詞」を決める。

考えかたはこうだ。「私は英語の先生です。」の主語は「私」I、次に動詞はどうする?日本語の「です」を動詞に使うとI am(be動詞)となり、その先はI am a teacher of English.と長くなってしまう。

「シンプルな英語」の世界では、動詞を最大限に活かす。I am(~である)よりもI teach(教える)という発想で文を作る。「教えている」つまり「先生である」ことまでが、主語と動詞を並べた瞬間に伝わるのだ。それだけ結論が読み手に早く届く。そしてI teach English.と3語で英作は完了。be動詞を使ったI am a teacher of English.のようにa teacherの冠詞a(名詞の前に必要)やof Englishの前置詞ofを選ばなくてはいけない複雑さもない。書き手が簡単に組み立てられて、読み手は早く情報が得られる。痛快な英文だ。

     △ I am a teacher of English.  長く複雑。
  
     ○ I teach English.          短い。結論が早く届く。

日々の業務ではテクノロジーについて書くので、主語は「人」に限らない。例えば「インターネットのおかげで、在宅勤務者が互いに連絡をとることができる。」このように少し難しい日本語も、日本語から英語に直訳しそうな頭のはたらきをぐっと抑え、英語の主語と動詞を取り出す。取り出した英語の「主語」と「動詞」をカチッ、カチッとブロックを組み立てるように配置。主語は「インターネット」。動詞「連絡をとる」は「つなぐ」を表す「コネクト」にしよう。続けて「在宅勤務者」を表す「テレワーカー」を複数形で配置。

  ○ The Internet connects teleworkers.

日本語を英語に置きかえた△Thanks to the Internet, teleworkers can be connected to one another.よりも短く、伝わりやすい。

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