――本作では不倫が「過ち」として描かれていない感じがしました。「生きていればこういうこともあるよね」という何気なさがあったというか。浮気がわかった後も、風吹ジュンさん演じる佐和子の母親の真由美と俊夫はとても仲が良く、新しい家族関係、男女の関係が描かれているようでした。

『先生、私の隣に座っていただけませんか?』より
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柄本:「女性が自立した生き方をする」という意味では、一般的な不倫の物語とは異なったものになったかもしれません。男女が別れた後も友達のようにつながりを持ち続けるということもそうで。でも、男女や家族のあり方の普遍的な部分は変わっていないと思います。

確かに、この映画では不倫は深刻なものとして描かれてはいませんが、やはり相手に裏切られるのはつらい。だからこそ、俊夫は佐和子の不倫疑惑を察知した時に滑稽なまでに苦悩し続けるわけですよね。

また、不倫は以前から映画で描かれてきましたが、それは現実社会では「してはいけないこと」だからなのではないかと思います。映画でやってくれているから、夫婦生活に多少の不満があってもリアルの生活では自制心を持って過ごすことができる。映画の中で自分の願望が満たせる部分はあると思います。

この映画は、そうしたことを踏まえたうえで「佐和子と俊夫のどちらの立場から観るか?」が問われています。そして、その二人のやり取りにはカーチェイスのようにせめぎ合いがある。その中立性がこの作品の魅力だと思います。