「自分よりデキる妻」が夫を不倫に走らせる?

――妻が自分より仕事で成功していることにフラストレーションを感じる男性は少なくないと思うのですが、そのうえ、この作品では妻の不倫疑惑も浮上します。それでも、俊夫は佐和子に対してモラハラ的な言動をすることなく映画がラストを迎えたのが印象的でした。

柄本:やはり男性だったら、そのシチュエーションは嫌なのかもしれませんね。でも、俊夫は楽観的なんです。「描けない」という事実から目を背けるというより「描けないものは描けないし」と受け入れている。

確かに、「描けない」というフラストレーションが佐和子の編集者である千佳との不倫につながっているのかもしれません。でも、そこは俊夫の人間像の主軸ではないのではないかと。「自分のストレスを解消するために不倫をする」という明確な意思はなく、流れに身を任せていたら不倫をしていたのではないでしょうか。

『先生、私の隣に座っていただけませんか?』より
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――編集者の千佳のあっけからんとした雰囲気に今の時代の女性像を感じました。「担当作家の夫と不倫している」というとドロドロした感じがしますが、彼女は「仕事が一番」の自立した女性ですよね。

柄本:編集者の千佳にとって、俊夫との関係は本当にただの「楽しみ」なんでしょうね。真面目なお付き合いではないというか。でも、編集者としてのプロ意識は高い。俊夫との関係はさておき、仕事のチャンスをきちんと掴んでいます。

堀江監督自身が根っこに強いものを持っている人なのですが、雰囲気はとても柔らかい人なんです。「柔よく剛を制す」イメージで、「気が付いたら寝技を掛けられていた」という感じです。

映画もコメディタッチで強いメッセージを発するわけではないのですが、撮影が終わって出来上がったものを見てみたら、堀江監督の確固たる意志を感じるものでした。やはり、この映画は人間の自由や自立を描いているなと思いました