岩根 高橋さんは、何か印象に残っている作品はありますか?

高橋 『凪のお暇』(2019年)は、友情、女性の自立、親との確執など最近の社会的要素が有機的に入っているなぁという印象でした。高橋一生さん演じる彼氏のモラハラチックなところは、身近に潜む問題に思えて、ちょっと辛かったですね。あの感じの息苦しさというのは、世代を問わず、幅広い女性の心に刺さると思いました。

岩根 『妖怪シェアハウス』(2020年)も、現代の女性の生きづらさをうまく描いた印象的なドラマでした。お岩さんやお菊さんといった、かつてしんどい思いをした女たちの妖怪と現在の女性が抱える問題を地続きに描いたという点が、すごく面白かったですね。

-AD-

高橋 結婚観が変わって、働く女性像だけでなく、主婦像も変化していると思いますが、ドラマでの描かれ方で気になる変化はありますか?

岩根 結婚観やいわゆるジェンダーロールみたいな描き方はもちろんですけど、日常のさりげない場面の描かれ方も変わってきていると思います。例えば、すごく些細なことですが、テレビ朝日で続いている『特捜9』というドラマがあるんですが、先日たまたま見た回で、女性捜査員がコーヒーを入れて同僚に渡すシーンで、受け取った人たちがみんな「ありがとう」ときちんとお礼を言っていたんです。本当に些細なことなんですが、こういうことをドラマの中できちんと見せることこそ大事だな、と。

テレ朝のドラマって、意外とそういうところを丁寧に描いているものが多い。2003年から10年続いたドラマシリーズの『京都地検の女』も、名取裕子さん演じる京都地検検事のあやは、単身赴任でしっかり働いているんですが、夫ともラブラブで、娘もきちんと育てている。物語の本筋としてそこを重要視するわけではなくて、生活や彼女のキャラクターが自然と描かれている。意外と見落としがちだけど、そういうものが力になるよなぁって思うんですよね。

高橋 そういう丁寧な描写があるから、長く愛される作品なのかもしれませんね。

岩根 テレビドラマは時代の空気を映すものであると同時に、そこに映ったものが時代の空気を作っていくものでもある。

高橋 だからこそ、日常の描き方は大切ですね。理想的なものを映すことも、テレビドラマのひとつの役目でもありますね。