高橋 結婚が選択肢の一つとしてフラットに描かれるようになってきましたよね。結婚は個人のものだというお題目はかなり前からあるけれど、日本の社会において、結婚はどうしても規範として働いていた部分があるので、単純な制度というより、そこにモラルが乗ってくる。

岩根 『大豆田とわ子と三人の元夫』(2021年)は、それこそ、結婚をモラルとして描いていない作品でした。松たか子さん演じるとわ子は3回離婚している。経済的には自立した女性だけど、一人だと寂しい。だから誰かと一緒にいたいという、一人の女性の感情がとてもニュートラルに描かれていた。彼女のような女性なら、結婚にこだわらず、同棲やパートナーでもいいと思うんです。だけど結婚に結び付けられているところが、今の若い世代の結婚願望ともリンクするのかも……。

この先、そういう結婚の新しいモデルケースになるようなドラマが出てくるかもしれませんね。ちなみに、3人の元夫たちがとわ子について「自分たちのダメなところを彼女は直そうとしなかったよね」と語り合う場面があるんですが、とわ子が結婚に対する変な幻想を持っていないことがわかる、とても素敵なシーンでした。

高橋 他にも、女性を題材にしたドラマで注目してきた作品はありますか?

岩根 結婚という切り口から少し外れますが、2015年放送の『問題のあるレストラン』も特筆すべきドラマでした。年齢、性格、境遇もバラバラの登場人物たちは、社会に蔓延するパワハラやセクハラ、女の生きづらさを可視化するキャラクターとして描かれています。そして年長者は自分が闘いから逃げたり、負けてきたことによって、下の世代が同じ目にあい続けていることを悔やみ、彼女たちを守るために男たちと闘うことを決意する。この、自戒を込めた下の世代を思う目線を得たことによって、ドラマの中で描かれるシスターフッドが一歩前進したように思います。

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高橋 働く女性=キャリアウーマン、家事ができない、みたいなステレオタイプな描かれ方も、もはや崩れつつありますよね。

岩根 最近は、恋も結婚も仕事も生活も、全部が自分の人生であり、それらをすべてひっくるめた描かれ方が多くなっている気がします。例えば『獣になれない私たち』(2018年)や『わたし、定時で帰ります。』(2019年)、『私の家政夫ナギサさん』(2020年)といった作品は、普通に仕事をしている女性たちが主人公。バリバリのキャリアウーマンではなく、自分の仕事をきちんとやる普通の女性。彼女たちは、ドジっ子でヘマばかりというより、むしろ仕事がちゃんとできちゃうがゆえのしんどさを抱えている。そういう現在の働く女性像がとてもリアル。

高橋 制作現場に女性のスタッフが増えてきているという背景もありますよね。ドラマはあくまでドラマであり、それがリアルじゃないからこそ楽しめるという面もありますが、そこに何となく日常と地続きのリアリティが組み込まれることによって共感も得られる。