荒廃中国社会―野次馬たちは白昼、公道の強姦事件を止めずに眺めた

07年から始まった「世も末」な風潮
北村 豊 プロフィール

「私も脅されるのが怖いから」

9月2日、中国のネット上に小悦悦事件の再来かと題された動画が掲載された。ただし、この動画には日時や場所の記載はなく、日時や場所は不明である。

動画は、ビルの階段を下っていた男が、急病か何かで突然倒れて階段を転がり落ちるところから始まる。男は階段の踊り場まで転げ落ちると動かなくなった。そこで画面は3人の公安局の警官が監視カメラの映像をチェックしている場面に切り替わった。彼らが見ている映像は、この男性が階段の踊り場に転げ落ちて動かなくなった場面であった。

3人の警官は動画を見ながら、状況をチェックして行くが、その内容は次の通り。すなわち、警官たちが見詰める画面の中では、踊り場に倒れた男は服がめくれて、横腹が露出していたのだが、その横腹の皮が呼吸をするたびに動いていたので、警官たちは男がまだ生きていると判断していた。

そこに清掃員の女性が清掃道具を持って階段を降りて来たが、下の踊り場に男が倒れているのを見ると、触らぬ神に祟りなしということなのか、120番(救急車要請)への通報もせずに画面から姿を消した。おそらくその階の廊下を通って迂回したものと思われる。

続いて1人の男性が階段を降りて来たが、踊り場に男が倒れているのを見ると、男の身体を跨(また)いで、下の階へと階段を下りて行った。彼は倒れている男性が気にはなったようで、何度か振り返って男性を見てはいたが、結局助けようとはしなかった。

それからしばらくして3人目の男性が階段を下の階から駆け上がった来たが、踊り場に倒れている男には目もくれずに、男の身体を飛び越えると一気に階段を駆け上って行った。その後に4人目の男性が下から階段をゆっくり上って来たが、彼も踊り場に横たわる男性には何の興味もないようで、無表情に男性を跨ぐと何事もなかったかのように上の階へと階段を上って行った。

こうして男が踊り場に倒れてから1時間余りが経過した頃、男は階段を降りて来た5人目の男性によって救助されたのだ。男性は横たわる男を見ても慌てることなく、落ち着いて男の脈を測った上で、120番に通報を入れて救急車の出動を要請したが、救急車が到着した時には男は既に死亡していたのだった。

5人目の男性が男を救助する前に踊り場に横たわる男を見ていた男女4人の誰かが少しでも早く120番に通報していれば、男は一命を取り留めたかもしれなかったが、残念ながら4人は他人の不幸に関わろうとはしなかったのであった。

この動画を見たネットユーザーの1人は、「我也不敢報警,怕被訛(私も脅されるのが怖いから敢えて通報しようと思わない)」とのコメントを投稿した。この「脅されるのが怖いから」の意味は、120番に通報して救急車の出動を要請したことを理由に、一命を取り留めた男、あるいは死亡した男の家族に「男を階段から突き落とした犯人だ」として訴えられる可能性を指しているのである。

 

その理由は医療費が高額であることから、自分で転んで負傷し、医院で治療を受けたとしても、高額な医療費を支払うだけの余力がないので、転んだ自分を救助してくれた恩人を「自分を転ばせて負傷させた加害者」にして医療費を負担させようとする不埒な人間が絶えないことにある。

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