荒廃中国社会―野次馬たちは白昼、公道の強姦事件を止めずに眺めた

07年から始まった「世も末」な風潮
北村 豊 プロフィール

事故の2歳児を見殺しにした2台と18人

上述した動画の投稿を見たネットユーザーたちは、李某某が麦某某を強姦しようとしている現場を遠巻きにして見物したり、動画を撮影していた野次馬たちに怒りを表明した。

女性が強姦されているのを見ていながら、野次馬たちは「麻木(無関心)、冷漠(冷淡)、無情(非情)」であるとして、中国人の「見死不救(人の危急を見て救わない)、圍観看熱鬧的冷漠自私(野次馬で高見の見物をする利己的な冷淡さ)」は議論されてしかるべきだとネットユーザーたちは問題を提起したのだった。

ネットユーザーたちが、この事件で思い出したのは、同じく佛山市で今から10年前の2011年に発生した「小悦悦事件」と呼ばれる交通事故であった。

この事件は、2011年10月13日の17時半頃に佛山市南海区黄岐鎮にある「広佛五金城」という名の金物店街で、幼児が車にひかれたものだった。当日は生憎の雨降りであったが、当時2歳でよちよち歩きの女児「王悦(幼名:小悦悦)」(以下「悦ちゃん」)は、家族の知らない間に雨の中を1人で家から100メートル以上離れた所まで歩いて行ってしまった。金物店街を貫通する道路は車1台が通行できる程度の幅しかなかった。その道を悦ちゃんは歩いた。

この金物店街を貫通する道路には監視カメラが設置されていたので、悦ちゃんの交通事故の一部始終は撮影されていた。

この道路をよちよち歩く悦ちゃんは小さくて運転者の視界には入らなかったのか、悦ちゃんは1台のピックアップトラックにひかれて道路脇に転がされたが、運転者は悦ちゃんをひいたことに気付かず走り去った。その後、3人の通行人が道路脇に流血して横たわる悦ちゃんの横を1人ずつ通過したが、彼らは悦ちゃんを見て見ぬ振りで、素知らぬ顔して通り過ぎた。

その後に事故現場を通り掛かったのは1台のライトバンだった。その運転手も道路脇に横たわる悦ちゃんに気付かぬまま車輪で悦ちゃんの両脚をひいたが、何も気付かずに走り去った。その後に合計15人もの通行人が流血して道路に横たわる悦ちゃんを目にしながた救助しようともせず知らん顔して通り過ぎたのだった。

そして、第19人目に現場を通り掛かった佛山の地元住人である「清潔工(清掃労働者)」(当時58歳)が悦ちゃんを救助したところに、悦ちゃんの母親が現れて瀕死の悦ちゃんを受け取り、電話で救急車を呼んだのだった。

救急車で広州軍区広州総医院へ搬送された悦ちゃんには懸命の救命処置が施されたが、事故発生から丸7日後の10月21日に薬石効なく天国へ召されたのだった。

最初にひいたピックアップトラックの運転者は事故翌日に自首し、最終的に懲役2年6カ月に処せられたが、その次のライトバンの運転手は無罪釈放となった。

この事件では、合計18人もの通行人が、流血して横たわるわずか2歳のいたいけな悦ちゃんを見て見ぬ振りで放置して通り過ぎた。第19人目の通行人として悦ちゃんを救助したのは、人々から卑しい職業とさげすまれている清掃労働者の女性だった。

この事件を通じて「他人が危機にあっても見て見ぬ振りで知らん顔する中国人」という話題が中国全土で議論され、メディアを挙げて公徳心の重要性を国民に訴えたものだった。

 

ところが、小悦悦事件から10年が経過したにもかかわらず、今回の白昼堂々の強姦未遂事件でも事態は改善されず、野次馬根性に毒された人々は女性が強姦されるのを見ても助けようともせず、興味津々で眺めているばかりであった。

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