「神を信じない人」が増えているアメリカで、いま起きつつある「重大な変化」

日本人も無関係とは言い切れない
岡本 亮輔 プロフィール

「ヒューマニスト」が意味するもの

こうした無宗教者・無神論者の増加は、ヨーロッパで先に進んでいた宗教離れが米国に到達したものと理解できる。そして今回、そもそも教会指導者を養成するために設立された米国最古の大学で、無神論者のチーフ・チャプレンが誕生したのである。

ハーバード大学のウェブサイトによれば、エプスタインは世界で最も知られるヒューマニスト・チャプレンの1人で、マサチューセッツ工科大学でも同様の役職を務め、無宗教者の倫理的生活やコミュニティライフをサポートしているという。

エプスタインには、『神がいなくても大丈夫―10億人の無宗教者が信じること』(2009年)というベストセラーの著作がある。前述の通り、米国で無神論者が嫌われるのは、神と聖典を否定するがゆえに、倫理や道徳を欠いた人物とみなされるためだ。

 

同書の表現を借りれば、無神論者とは、動物を虐待し、血まみれの手斧を持って追いかけてくる殺人鬼のようにイメージされるのだ。それに対して、エプスタインは「神がいなくても大丈夫(Good Without God)」というタイトルを掲げ、人が生きる上での倫理や道徳は宗教の助けなしに調達できることを宣言したのである。

エプスタインは、自らの無神論をヒューマニズムであると説明する。ヒューマニズムやヒューマニストは日本語にも定着しており、弱者や貧者をいたわり、奉仕活動などに熱心な人といったイメージが先行するだろう。だが、今回の文脈で重要なのは、人間の価値や尊厳を最重要視するがゆえに神や宗教といった権威を認めない、したがって無神論者であるという点にある。

同書によれば、無神論者の方が慈善活動や社会正義に熱心であり、宗教離れが最も進んでいる北欧諸国の方が、暴力事件は少なく、貧困層のケアは手厚く、教育水準も高い。また、宗教的な瞑想や祈りにも心理的な効能はあるかもしれないが、無神論者が世俗的なポジティブ・イメージを思いながら瞑想しても同等の効果が得られるという。

関連記事

編集部からのお知らせ!

おすすめの記事

ABJ mark

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標 (登録番号 第6091713号) です。 ABJマークについて、詳しくはこちらを御覧ください。https://aebs.or.jp/