私たちが働いた稼ぎを横取りする「職場の独裁権力」を倒すには

会社を所有すべきなのは、本当は誰なのか
ヤニス・バルファキス プロフィール

株が取引できなければ、職場の独裁権力はなくなる

イヴァがあげた3番目の理由はいちばん説得力があったが、アイリスにとっては同じく決定的ではなかった。

「たとえウエイターの働きぶりが、あまり熱心じゃなかったとしても」アイリスが続ける。

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「私とあなたはやはり株式の過半数を保有することになり、ウエイターを解雇するか、ボーナスを減らすことはできる。そしてそれが第2、第3のウエイターを採用する時に、役に立たない人材は雇わないよう、私たちがより慎重になるんだったら、それだけでもいいと思うけど。差し迫った問題は、誰がどの株を保有するかじゃない。つまるところ、同じだけ株を保有しているからといって、必ずしも同じ報酬を受け取るわけじゃない。だけど同数の株の保有は、長年のあなたの考えを裏づけ、問題を解決する唯一の現実的な方法のはず。共同事業に対する個人の貢献を客観的に測定するのは不可能だ、とあなたは以前から主張してきた。論文を発表する際、共同執筆者のかたちをとって、研究者の名前をアルファベット順に並べる慣例を踏襲するのも、そのためでは?」

「個人はどんな重要な意味でも平等だ、という危険な考えを左派が捨てるのは、私、いつでも大歓迎よ」イヴァは悪戯っぽく言った。

「さてそれじゃ、誰がどれだけ株を保有し、それがどんな効果をもたらすのかという問いから離れて、本題に戻りましょうか。本当の問題は、私たちが会社の純収入を、職場の独裁権力によって配分されたいのか─株が取引可能なら当然そうなる。それとも、企業の戦利品の配分を職場の民主主義によって決定したいのか─それが可能なのは、取引できない株が同等に配分された時だけになる」

ふたりは問題の核心に迫っていた。