私たちが働いた稼ぎを横取りする「職場の独裁権力」を倒すには

会社を所有すべきなのは、本当は誰なのか
ヤニス・バルファキス プロフィール

カフェの創業者が株を持っているのに、なぜウエイターは持てない?

「こんな想像をしてみて。私とあなたがカフェを始めたとする。一生懸命働いて、たっぷり愛情をかけ、もちろんお金もたくさんつぎ込む。そして、誰かを、たとえば午後にウエイターとして働いてくれる人を雇わなくちゃならなくなる。その時、あなたは本気でこう言うつもり? そのたまたま雇ったウエイターに、私たちと同じだけカフェの株を渡すよう、国が強制することは納得できる。そのウエイターに私やあなたと同じ意思決定権を渡す権利を、国は持つべきだって。お願いだから、歴史絡みの痛烈な皮肉はこの際、抜きにして、私の質問に答えてくれる?」

痛烈な皮肉と受け取られないよう、アイリスは呟くように言った。「人びとを労働力として捉えられず、そのことも認められない現象が蔓延している。だけど、あなたがイエスかノーで答えろと言うのなら」アイリスが続けた。「答えはイエスよ。ええ、国の強制によって、そのウエイターに私たちと同等の意思決定権を渡すことには、まったく問題がない。それどころか、そうすべきだと思う。

 

こう考えてみて、イヴァ。私の数学の能力は、どう見てもあなたの能力には及ばない。私たちがカフェにつぎ込んだ労力、能力、エネルギーも必然的に同じじゃない。それでも、あなたはこの私とカフェの株を半分ずつ保有しても構わないと思うのね? もしあなたと私でカフェの株を半分ずつ保有しても構わないのなら、どうしてウエイターとはダメなの?」

「それには、明らかな理由が少なくとも3つある」イヴァが冷静に説明した。「第1に、私とあなたが一緒にカフェのアイデアを考え、開店に向けて労力をつぎ込んだ。だけど、そのウエイターはカフェができたあとで入り込んだ。第2に、私とあなたは同じだけ資金をつぎ込んだ。だけどウエイターは支払っていない。そして第3に、事業につぎ込んだ時間も資金も社会資本も圧倒的に少ないのだから、そのウエイターが私たちと同じだけ、事業に熱心だとは言えない」

「カフェのアイデアを思いついたのは、確かに私とあなたかもしれない」アイリスが答える。

「そして、開店に向けてふたりで労力をつぎ込んだとする。だけど、ビジネスはその日その日が勝負。ウエイターを採用した時から、彼女が毎日、店のためにつぎ込む労力は、私たちがすでにつぎ込んだ労力と同じじゃないかもしれない。だけど、同じくらい重要ではある。それに、カフェの所有権は本当に早い者勝ちなの? もしそのウエイターが、私やあなたには絶対に引っ張ってくることのできない、新規の顧客をぞろぞろ連れてきたらどう?

とはいえ、資金についての2番目の理由はもっと説得力がある。それでも、事業につぎ込んだ金額に応じて株が配分されるべき─事実上、購入されるべき─ことに同意するのなら、私たちがカフェで働き続けるかどうかに関係なく、当然、その株を売却できるわけよね? だけど、カフェで働いていない相手に株の購入を許したとたん、カフェは終わり。スターバックスは、テクノストラクチャーの付属物でしかない。私たちのカフェも、その惨めなスターバックスとして閉店するか終わりになる」